ChatGPTの可能性と脅威、ビル・ゲイツ氏も持論展開 AI議論で注意すべき3点とは?世界を読み解くニュース・サロン(2/3 ページ)

» 2023年04月06日 10時30分 公開
[山田敏弘ITmedia]

ビル・ゲイツ氏の持論――ChatGPTの可能性と脅威

 そんなAIの未来について、マイクロソフト社の創業者であるビル・ゲイツ氏は3月31日、7ページからなる「AIの時代が始まった(原題:The Age of AI has begun)」というタイトルのブログを発表した。

 そこでは「AIが私たちの生活を豊かにする」という、ゲイツ氏の描く未来について説明されている。コンピューターの歴史を変えた人物がどうAIを見ているのかは興味深い。その内容を紹介したい。

ビル・ゲイツ氏のブログ「AIの時代が始まった」(画像:GatesNotes「The Age of AI has begun」より)

 まず、ゲイツ氏の言う「AIの未来」とはそんな先の話ではない。5〜10年でAIがさまざまなことを大きく変えうると予測している。

 「AIの進化は、マイクロプロセッサーやパーソナルコンピューター、インターネット、携帯電話の誕生と同じくらい根本的なものだ。AIは仕事や学習、旅行、健康管理、コミュニケーションの在り方を変える。産業界全体がこの技術を中心に方向転換することになるだろう。ビジネスは、企業がいかにうまくAIを活用するかにかかっている」と、ビジネスにおいてAIが多くの仕事を奪っていくよりも、仕事の在り方をポジティブに変えていく可能性が高いという考えを示している。

 ゲイツ氏は「AIに取って代わられる仕事」についても持論を展開する。「例を挙げると、営業(デジタルまたは電話)やサービス、文書の処理(支払い管理や経理、保険金請求など)は意思決定が求められるが、継続して学ぶ能力は必要ない。企業にはこれらの作業を習得させるための訓練プログラムがあるが、ほとんどの場合、成功事例と失敗事例を基に社員を教育している。近い将来、こうした事例データをAIに学習させることで、人間がより効率的に仕事できるようなるだろう」

 つまり、最終的な意思決定が人間に求められる仕事におけるAIの役割は、あくまでサポートにとどまるという見解だ。AIは蓄積された過去データを基に、意思決定に必要な情報を用意・選出し、人間を補助する。またAIは、スケジュール管理やコミュニケーション、ECなどの領域においても高いサポート能力を発揮するとゲイツ氏は主張している。

AIはあくまで人間のサポート役にとどまるというのがゲイツ氏の主張だ(画像はイメージ、提供:ゲッティイメージズより)

 興味深いのは企業内での業務についてだ。企業内のルールや従業員の関連データなどをAIが把握し、従業員の相談相手になり得るという。そうなれば、会議にもAIが常に参加し、チームごとの予算を的確に提示したり、どの分野に誰が強いかを学んで適材適所の人事判断を下したりできるようになる。

 ゲイツ氏は「AIが営業やサポート、財務、製品のスケジューリング、企業内の文書などにアクセスする必要がある。業界に関連するニュースを読む必要もあるだろう。その結果、従業員の生産性が向上すると私は考えている」と主張する。

 さらに電子メールの送受信、管理などもAIが対応してくれるようになるという。コンピューターを操作するのに、マウスやカーソル、クリックなどが不必要になり、全てタイピングなどで済ませられる。さらにAIはユーザーの個人秘書またはコンシェルジュのような役割を担い、ユーザーの行動データなどからさまざまなことを管理してくれる。雑用が劇的に減ることで生産性の向上につながる。「AIは仕事を奪うわけではなく、あくまでサポートする存在」とゲイツ氏は強調している。

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