江ノ電の名物「12分ダイヤ」はなぜ終了したのか 70年も続いたのに杉山淳一の「週刊鉄道経済」(4/6 ページ)

» 2023年04月07日 08時30分 公開
[杉山淳一ITmedia]

 もう1つ、江ノ電を悩ませてきた場所が併用軌道だ。江ノ島駅と腰越駅の間、約500メートルが鉄道と道路の併用区間。路面電車のように走るところである。単線の線路の両側に1車線ぶんの道路がある。しかしこの区間は商店街だ。2月の平日、日中に観察してみると、各店で積み降ろしする自家用自動車がちょっと停まる。それを避けようとする自動車や自転車、バイクが線路にはみ出す。電車は進路をふさがれる。

名物の併用軌道も江ノ電には悩みの種だ。道路には「電車優先」の文字。電車に道を譲るクルマは他県ナンバーのレンタカー(筆者撮影)

 この街の人々だけなら譲り合いの習慣もあるし、共存共栄の範囲で収まる。しかし宅配便の普及で小型トラックなどが増えた。緑ナンバーのトラックは行儀良くコインパーキングなどを使っている。しかし、その他のクルマの通行量も増えている。昔は自動車が小さかった。今や多くの乗用車が3ナンバーだ。幅が広い。

 この地域の主な道路は海沿いの国道134号線だ。日中は渋滞している。そして次の大通りがこの併用軌道だ。ただ通過するだけの自動車も少なくない。ドライバーも気を使って電車に道を譲るけれども、交通整理は難しい。神戸橋交差点で右折しようとした自動車が、後続の電車に気付いて右に寄せて譲ったけれど、それでも線路にはみ出していた。ドライバーが電車が動けないと察して先に右折するまで、電車は停まったままだ。

一旦、左に寄せて電車に譲ったつもりが、わずかに線路にはみ出していた他県ナンバーのクルマ。電車が動けないと察して先に右折する。対向車線のクルマ(手前)は地元ナンバー、状況を察して待機していた(筆者撮影)

 江ノ電は全線単線で、途中の駅などで上下の電車が行き違う。だから、ある電車が遅れると、その電車と行き違う予定の電車も遅れる。駅などで行き違う電車の到着を待たなくてはいけないからだ。当然、その電車も遅れる。そしてその電車と行き違う別の電車も……というふうに、遅れはどんどん波及する。

 だから、カッチリと組んだ12分間隔よりも、余裕を持たせた14分間隔として、遅れを見込んでゆとりを持たせた。それが今回のダイヤ改正というわけだ。

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