ただ、中嶋副社長が「心揺さぶる走りとデザインを兼ね備えたまさに次世代のバッテリーEV」という説明の件に差し掛かった時、バックに映し出されていたクルマは、この「Lexus Electrified Sport」ではなかった。全く未発表のクルマが映し出されていたのである。
明らかに新型プリウスのデザイン系統に属するスタイルで、既存のBEVと印象が違う。これまでのBEVの造形は、ボディシェイプとしては、古典的なセダンかSUVがほとんど。ノーズ回りの造形をグリルレスにすることで、BEVらしさを演出してきた。
まれに「フィアット500」や「マスタング・マッハe」のような、自社のアイコン的デザインを取り入れた少数のクルマが注目を集めていたマーケットに、トヨタは、明らかにスペシャリティのジャンルを狙った、4ドアのクーペライクデザインセダンを投入しようとしている。それはブランドイメージをけん引すればよい限定的販売台数のスーパースポーツと異なり、本当に顧客の選択肢となる商品群の中で、旗艦となる商品だろう。
Cピラー回りの処理を見る限り、明らかにリヤドアを備えた4もしくは5ドアモデルである。少々見飽きた感が出てきたSUVに代わって、クーペライクデザインのセダンBEVは、基礎的なシェイプそのものに未来感がある。その未来感を担うのは、内燃機関車の常識を超えて、極端に低いノーズと、ハイライトを強制的に入れるためのプレスラインをもたないぬるりとした面構成で作られた造形だ。
一例としてノーズの起点からフロントタイヤ上へと続くフェンダーの厚みを、既存のBEV、例えばこれまで先進的でスタイリッシュといわれてきたテスラモデル3と比べてみると、その違いは分かりやすいだろう。
同時に「シャープで低く、視覚的に軽いルーフラインと、力強く踏ん張った大きな4つのタイヤ」という伝統的クルマのデザインとしての“カッコいい”を備えてもおり、このコンセプトを見る限り、最終的な仕上がり次第では伝統の延長に新たな世界を拓いた新提案といえるものになるのかもしれない。
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