”推し本”を置く神保町の「共同書店」が話題、どんな場所なのか一棚一棚に店主がいる(2/5 ページ)

» 2023年04月20日 08時00分 公開
[小林香織ITmedia]

店主の「体験」を価値にして売る

左がパサージュ。近隣の古本屋と比べると洗練された印象だ

 神保町すずらん通りの一角にある「パサージュ」は、古本が雑多に積み重なって置かれた一般的な古本屋とは異なり、おしゃれな本屋といったイメージだ。

 パサージュが採用する「共同書店」のシステムでは、それぞれの棚に店主がおり、店主が売りたい本を好きな値付けで販売できる。新品でも古本でも構わない。

歌人、エッセイストの俵万智氏の棚には直筆メッセージが
付せんが貼られた書籍、書き込みがある書籍も多くある

 「折れや曲がりがあったり、書き込みがあったりする本は、古本屋に持っていくと驚くほど安く買い取られるじゃないですか。ですが、作家や書評家などが気になった部分にメモや付せんをしていれば、それは付加価値になるはずです。店主の体験をそのまま売れるのが、パサージュのおもしろさだと思っています」(由井氏)

 1棚当たり月額5500円から販売されており、位置や大きさによって価格が異なる(入会金1万3200円は別途)。本が売れると、10%の決済手数料を差し引いた90%が店主にバックされる仕組みだ。

 有名作家や書評家のみならず、本が好きな人なら誰でも店主になれる。パサージュ側が招待した作家や書評家などは仕組みが異なり、棚賃が発生しない代わりに決済手数料が35%となる。

取材に応じてくれたオールレビューズ社の由井社長。広告代理店やリクルートで勤務した後、退職して書評アーカイブサイト「ALL REVIEWS(オールレビューズ)」を立ち上げた

 22年3月のオープン当初こそ空いている棚が多かったが、2〜3カ月すると棚が埋まるようになった。その後は人気が高まったため店主の抽選会を実施しており、その倍率は30〜40倍になっているという。

 書店での販売だけでなく、オンライン販売もしており、オンラインで売るかどうかは各店主に委ねられている。書籍の売れ行きは店主の人気度や宣伝への注力度に左右されるが、個人が出版している同人誌のような書籍の中には、1日100冊など売れ行きが良いものもあるそうだ。

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