クルマはどう進化する? 新車から読み解く業界動向

カーボンニュートラル燃料はエンジンを救うのか 欧州で始まったエンジン擁護論高根英幸 「クルマのミライ」(4/5 ページ)

» 2023年04月21日 08時00分 公開
[高根英幸ITmedia]

レースで鍛え上げるだけでは、普及にはつながらない

 今年のスーパー耐久選手権の開幕戦は3月18〜19日に鈴鹿サーキットで開催された。残念ながら注目マシンの1台であった液化水素を搭載したGRカローラは、事前のテストで問題が発見されたため不参加となり、ガソリンエンジンのGRヤリスが代わって出走した。

 CNFを採用したGR86やスバルBRZ、バイオディーゼルのMAZDA3などはすでに昨シーズンから走行しているマシンばかりであり、目立ったアップデートは施されていないように見える。昨年の最終戦でMAZDA2に代わってデビューしたMAZDA3は、前戦で見つかった問題点を改善しているという。

鈴鹿サーキットを疾走するMAZDA3。昨年途中までのMAZDA2よりもシャーシもエンジンもポテンシャルアップしていることもあり、とてもディーゼルレーサーには見えない。もっともアウディはディーゼルエンジンでル・マン24時間レースを制しており、今回のバイオ燃料開発はディーゼルの新たな可能性を感じさせるものだ(出典:マツダ)

 前戦では予選をキャンセルしていることから、決勝を走るために不具合を改善したのだろうが、さらに決勝を走って見つかった問題点やその場で解消できなかった問題点をクリアして、今年の開幕戦に臨んでいた。

 1、2回、耐久レースを走り切ったことで得られる知見は限られているが、2年3年と走り続けることで燃料の違いによる部品の耐久性や、より適した燃焼への仕様、燃料の改質が進められていくのだろう。市販車へと生かされるエンジン技術は、こうして積み上げられていくのである。

 今回のスーパー耐久選手権開幕戦は、5時間耐久レースであったが、アクシデントにより赤旗となり4時間強でレースは終了となった。CNF、バイオディーゼルのマシンについては、皆順調に周回を重ね、4時間を無事に走り切ったのだった。

 ドライブするドライバーの能力によるところも大きいが、CNF採用のGR86、スバルBRZは同じ車両で戦うST-4クラスよりも多くの周回を重ね、速さにおいても遜色ないどころかクラス優勝するほどの速さを見せた。MAZDA3においてもディーゼルエンジンとは思えない速さを見せて、4時間を余裕で走り切った。

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