EUの2035年エンジン車販売禁止策が、見直されることになった。クルマすべてをEVに置き換えるのは、あまりにも無謀だということをドイツが認めたからだ。ロシアのウクライナ侵攻によるエネルギー不安も影響し、予想より早く現実論を唱え出したのである。
そこで登場したのがCNF(カーボンニュートラルフューエル=燃焼しても大気中のCO2が増えない燃料)である。具体的には大気中のCO2と水素を合成してできる燃料を使用すれば、エンジンでもカーボンニュートラルが実現できるとして、エンジン車の販売を限定的に容認しようというのだ。
突如のようにわいて出た合成燃料ブームに、自動車業界は救世主が登場したかのように盛り上がっている。しかしCNFは、技術的には確立されていても、普及して誰もが利用できるとなると、そこにはいくつものハードルが存在する。
なぜならCNFは物理の法則に逆らえない以上、作り出すためには膨大なエネルギーを必要とするからだ。つまり液体燃料のエネルギー密度の高さを人工的に再現しようとしたら、そこには膨大なエネルギーを投じる必要がある。
水素だけでも、作り出すためには相当なエネルギーを消費し、それを圧縮したり冷却するためにはまたもエネルギーを費やすのだ。
生産コストはそれなりに掛かるので、石油から精製したガソリンのようにはいかない。そのためテスラModel Sのように、コストを度外視して利便性を追求した富裕層のためのクルマになってしまう可能性もある。
そのエネルギーを電気のままEVの充電に当てたほうが無駄が少ないという意見もあるが、蓄電にもロスや電池の劣化があり、電気のまま蓄えておくのも損失は大きい。また急速充電であれば発熱やその冷却などでの損失も無視できない。EVが普及するほどそうした損失が増えて、目には見えない電力消費が膨れ上がることになる。
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