「ゼロゼロ融資」は逆効果? 利用企業の倒産が前年度比3.6倍に 東商リサーチ調べ

» 2023年04月25日 16時36分 公開

 コロナ禍で経営難に陥った中小企業などに、実質無利子・無担保で実施された「ゼロゼロ融資」。東京商工リサーチの調査によると、2022年度のゼロゼロ融資を利用した後に倒産したのは541件で、前年度の3.6倍と急増したことが分かった。

photo 東京商工リサーチは22年度のゼロゼロ融資後の倒産が541件と発表(画像はイメージ、提供:写真AC)

 負債総額は、1355億300万円で、前年度(642億1900万円)の2.1倍となった。一方で平均負債額は2億5000万円と、前年度(4億2800万円)より減少。小規模倒産が増加していることがうかがえる。

photo ゼロ・ゼロ融資後倒産月次推移(出所:プレスリリース、以下同)

産業別では?

 産業別で見ると、「サービス業他」が177件(前年度比32.7%増)で最多。そのうち、居酒屋などの飲食店や持ち帰り飲食サービス業を含む飲食業が88件(同486.6%増)だった。客足が戻らない中、食材費や光熱費の高騰、人手不足に伴う人件費の上昇などのコストアップが重なって倒産が広がっている。

photo 産業別状況(出所:プレスリリース、以下同)

 その他、業種別に見ると「食料品製造業」が26件(同225.0%)、「飲食料品卸売業」が24件(同380.0%増)など、外出自粛で打撃を受けた飲食業を中心に、食料品関連業種が上位に入った。

 また、「総合工事業」(41件)、「職別工事業」(31件)、「設備工事業」(20件)も目立った。人手不足に加え、資材値上げや調達遅れに伴う工事延期なども影響したようだ。

負債額別では?

 負債額別では、「1億円以上5億円未満」の214件(前年度比229.2%増)が最多で、約4割を占めた。次いで、「1000万円以上5000万円未満」が151件(同403.3%増)、「5000万円以上1億円未満」が111件(同326.9%増)となった。

photo 負債額別状況

 コロナ禍の資金繰り支援策として倒産抑制に大きな効果を見せたゼロゼロ融資は、同時に「過剰債務」という副作用をもたらした。東京商工リサーチは、「コロナ禍も出口が見えつつある中、ゼロゼロ融資は返済のピークを迎える。物価高や人手不足など業績回復の見通しが立たず、元本返済と金利負担から資金繰りに窮する企業がさらに増えることが危惧される」とコメント。企業体力が弱まっている中、新たな支援策の必要性にも言及した。

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