国産牛乳に危機 「酪農業」の倒産・休廃業が過去10年で最多帝国データバンク調べ

» 2023年05月12日 07時00分 公開

 食卓に欠かせない牛乳に危機が迫っている。帝国データバンクの調査によると、2022年に発生した「酪農業」の倒産・休廃業は14件だった。前年の8件から大幅に増加し、過去10年で最多を更新した。

photo 酪農業の倒産・休廃業が過去10年で最多(画像はイメージ、提供:写真AC)
photo 「酪農業」倒産・休廃業等件数推移(帝国データバンク調べ、以下同)

 酪農業では、過去に国産生乳不足に伴うバター不足などが度々発生。政府は施設整備や機械導入を最大半額補助する「畜産クラスター事業」を開始し、酪農家もこれに応え生産規模を拡大してきた。しかし増産体制が整った直後にコロナ禍が直撃し、業務用や学校給食用の牛乳消費が急減した。

 コスト増加分の価格転嫁も難しい状況の中、ロシアのウクライナ侵攻や円安による輸入コストの増加でエサ代が最大1.6倍まで高騰するというダブルパンチに直面。副収入の仔牛・雄牛も外食需要減少で競り落とし価格が低迷し、コスト増加分を補うには至らなかったようだ。

photo 飼料価格が高騰の一方、パック牛乳等への製品価格転嫁が遅れる

 帝国データバンクは、「酪農家の高齢化や後継者不足、設備投資による借入負担も重なり、『生産するだけ赤字』の状況に耐える経営体力がない事業者も多い。そのため、昨今の飼料高といった経営環境の急変を前に、倒産や休廃業の決断を余儀なくされたケースが急増したとみられる。

 乳製品のさらなる価格上昇は消費低迷も起こしかねない。飼料高騰と値上げ難を前に酪農家が経営を諦める状態になれば、国産牛乳が入手困難となる『酪農危機』が現実に起きる可能性も否定できない」と指摘する。

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