ここまで読むと「うかつに指導できないしコミュニケーションも取れない」と思う方もいらっしゃるのではないでしょうか。しかし、むやみに怖がることはありません。厳しく言ったから直ちに「パワハラ」と判断されるわけではないので、まずはハラスメントの定めについて正しい理解をすることが重要です。
パワハラは(1)優越的な関係を背景とした言動がある、(2)業務上必要かつ相当な範囲を超えたものである、(3)労働者の就業環境が害されるものである、という3つの要件を全て満たした場合に「パワハラである」と判断されます。従って、(1)優越的な関係を背景とした言動があった、としても(2)業務上必要かつ相当な範囲を超えたものでなければ、パワハラには当たりません。セクハラも考え方は同じで、プライベートを聞いたからといって、直ちに「セクハラである」と判断されるわけではないのです。
また、ハラスメントの定めを正しく理解する以外にも方法はあります。今回のAさんのケースは、人間関係を良くしたい、メンバーに成長してもらいたいという思いはあるものの、自身の人間関係の作り方、管理職になるまでの成功体験、管理職という役職による人間的な優位性などの「思い込み」によって、その思いの伝え方を誤ってしまった結果ともいえます。
もし、Aさんが人間関係の作り方は人それぞれである、管理職になるまでの成功体験も人によって異なる、管理職という役職も役割の違いであって人としての優劣があるわけではないことを意識しながら接していれば、結果もまた違ったことでしょう。
つまり、価値観や受け取り方は人によって異なるものであると理解し、上司や部下、男性や女性といった関係性にかかわらず一人の人間として敬意を持って接することも、ハラスメントを防ぐ方法の1つといえます。
ハラスメントは誰かが我慢をすれば解決するものではありません。声に出さないとますますエスカレートしてしまう可能性もあります。
ハラスメントを受けたと感じたら、まずは同僚、先輩や上司に相談するようにしましょう。また、会社はハラスメントに対して相談窓口を設置することになっています。その相談窓口は社内の窓口だけなのか、外部の窓口もあるのかどうかを事前に確認をしておくことも重要です。社内の窓口には相談しにくいこともあると思いますので、その場合は社外の窓口に相談をすることも必要な対応になります。
ハラスメントは被害者だけではなく、行為者にも大きな影響を与えます。Aさんは、そもそもハラスメントをしようと思っていたわけではありません。人間関係を良くしたい、メンバーに早く成長してほしいという思いがあった結果の言動だったわけです。Aさんの言動に対してもっと早い時点で相談がされてれいば、懲戒処分ではなく注意で済んだかもしれません。それによって、Aさんも考え方を改めて良い人間関係やメンバーへの指導ができたかもしれませんし、会社としてもAさんのモチベーションの低下を防げたかもしれません。
ハラスメントは会社や個人の努力だけで解決はできません。行為者とならないように、被害者にならないように、そして同僚、上司などを行為者や被害者にさせないようにハラスメントを「しない」「させない」「ほっとかない」ことを会社全体で意識することが重要といえるでしょう。
1978年東京生まれ。A型。2008年10月入所。
2001年3月に大学を卒業し、民間の会社に就職をするが、その年に退職する。その後2002年4月から自動車整備の専門学校に入学し、2級ガソリン自動車整備士、2級ジーゼル自動車ガソリン整備士資格を取得、2004年3月に卒業。
2004年4月から2008年9月までハーレーダビットソンのディーラーで整備士として勤務していた。
2013年9月より、海外進出プロジェクトのメンバーとして、アジアを中心とした海外進出に必要な労務管理、社会保険についてのアドバイスを行っている。
現在は約20,000名の企業様の社会保険手続きや数万人の企業様の相談顧問を行っている。また、ハラスメント・コンプライアンス外部相談窓口のリーダーとして相談員の業務も行っている。
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