「部下に残業させられない」と犠牲に──しわ寄せを受ける管理職のため、会社がすべき2つのこと管理職にこそ「働き方改革」を(1/3 ページ)

» 2023年03月30日 06時00分 公開
[土井裕介ITmedia]
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 2019年4月に働き方改革関連法が施行されました。中でも最大のポイントである時間外労働の上限規制については、現在では医師など一部の業種を除いて適用されています。法律施行前は残業時間について制限はありませんでしたが、法律で明確に労働時間の上限が明言され、残業時間に制限がかかってしまうことになったのです。

kanri 働き方改革関連法施行から4年(写真はイメージ、提供:ゲッティイメージズ、以下同)

 施行から4年が経つ今、働き方にどのような変化が起きているのでしょうか。

「働き方改革」で頭を抱える管理職

 労働時間の上限規制が行われ、労働基準監督署をはじめとした行政の動きも強化されました。筆者のクライアントでも「監督署から是正勧告を受けました」など、行政からの臨検が増えた印象があります。大企業を中心に、時短への取り組みに本腰を入れる企業が増えたのでしょう。

 ところが、コンサルタント会社でマネージャーをしているAさんは、「俺が法律の犠牲になりそうだよ」と頭を抱えていました。Aさんが勤める会社は時間外労働の上限規制後すぐ、労働基準監督署の臨検により違法な時間外労働を指摘されてしまったのです。社員の数名の月の時間外労働が100時間を、また一部の部署の時間外労働が平均90時間を超えていました。

kanri 「俺が法律の犠牲になりそうだよ」と頭を抱えるAさん

 そこでAさんの会社は、会社をあげて時短に取り組むことを決意。会社の方針として全ての社員の時間外労働について80時間以下にすることとし、合わせて生産性の向上と売り上げの維持を全管理職に命じたのです。

 Aさんの会社は、(1)水曜日はノー残業デーとする、(2)午後9時になったら強制的に仕事を終了し鍵を閉める、など徹底的に時短に取り組みました。しかし、ここで問題が発生しました。仕事量が変わらないにもかかわらず、おしりの時間が決められたことであふれた部下の仕事は、労働時間の適用が除外されているAさんや他の管理職に集中したのです。

kanri Aさんや他の管理職に業務が集中

 さらには休職者や退職者が出た時の業務の引き継ぎも、部下の労働時間が36協定の限度時間ぎりぎりということで、当然のように管理職が巻き取ることになったのです。管理職は通常のマネジメント業務に加えて、プレイヤーとしての業務を日常的に行うようになったことで労働時間が激増しました。

 また、大手メーカーの人事部に勤めるBさんも途方に暮れていました。Bさんの勤める会社にも労働基準監督署の臨検が入り、時短の指導を受けました。Bさんは、時短に関しての施策が思い付かなかったこともあり、労働基準監督官にアドバイスを求めたところ「増員をする。業務改善をする。それでも難しければ売り上げを諦めるしかない」とバッサリ言われたというのです。

 「増員を行うこと」「売り上げを諦めること」などは、経営者の立場から容易に判断できないこともあり、実際には業務改善をする選択肢しかないと言えます。しかし、業務改善もすぐできるものでもないことから、実際にあふれる部分は労働時間の適用が除外されている管理職が巻き取ることになるのです。

kanri 4月からは中小企業でも、月60時間を超える残業の割増賃金が150%に

 さらに4月からは、これまで中小企業に対して施行を猶予されていた、法定時間外労働時間が月60時間を超える残業に対する割増賃金が、125%から150%に変更します。中小企業でも今まで以上に時短への取り組みが進むことが想定されます。部下に振ることもできず、1人で仕事を抱え込んでしまう管理職が続出してしまう可能性もあるでしょう。

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