東京商工リサーチは、上場企業の「早期・希望退職実施状況」を調査した。 1〜5月に早期・希望退職の募集を実施した上場企業は20社で、前年同期(19社)を1社上回った。業種別では情報通信が5社と4分の1を占め、最多となった。情報通信が業種別の最多になるのは、同社が統計を開始して以来、23年間で初となる。
コロナ禍で募集が集中した航空・鉄道を含む運送の募集は3年ぶりにゼロとなった。サービスは2社実施したが、いずれもインターネットサイト運営に関する部門や、ソーシャルゲーム開発部門の募集だった。同社は「22年末から米国など海外の大手テック企業が相次いで人員削減を打ち出しており、国内でもコロナ禍対応を進めた業種や企業で、見直しに伴う人員削減が現実味を帯びている」と指摘する。
早期・希望退職を募集した上場20社の直近の通期損益をみると、黒字と赤字が各10社だった。黒字企業は10社中7社がプライム上場。黒字かつ増益の企業は5社で、ナショナルブランドを多く抱える大規模な川上産業が並んだ。
一方、赤字の10社のうちプライム上場は4社だった。赤字の業種では情報通信(3社)、サービス(2社)などが目立った。
募集人数をみると、「30〜49人」(5社)が最多となった。以下、「100〜299人」(3社)、「1〜29人」「50〜99人」(各2社)と続く。300人以上は、中外製薬の374人(応募人数)の1社にとどまった。
東京商工リサーチは、「国内の企業活動もアフター・コロナのフェーズに入り、外食や宿泊などは人手不足が深刻さを増している。だが、業況回復に時間を要する企業やコロナ禍から需要の反動減を迎えた企業を中心に、今後、小・中堅規模の上場企業で募集が増える可能性も出てきた」と分析する。
調査は、「会社情報に関する適時開示資料」(23年5月15日公表分まで)に基づき、希望・早期退職者募集の実施を情報開示し、具体的な内容を確認できた上場企業を対象に抽出した。実施が翌年以降の企業は除く。
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