――カップヌードルがロングセラーに至った理由をどのように分析していますか
川合: カップヌードルが発売から50年以上にわたって多くの方に愛されている最大の理由は、商品としての完成度の高さにあると考えています。
川合: カップヌードルの開発は、容器を作ることから始まりました。片手で持てるサイズと軽さで、お湯を注ぐだけでそのまま食べられ、しかも手で持っていても熱くない――。それまでにない容器を作り出すため、創業者はガラス、紙、プラスチック、金属、陶磁器など、さまざまな素材を手当たり次第に収集しました。
その結果、日本ではまだ魚のトロ箱くらいにしか使われていなかった「発泡スチロール」(発泡ポリスチレン)に着目しました。自ら研究を重ね、軽くて、安全で、断熱性と経済性にもすぐれた素材に改良したのです。食品容器として使うのは、カップヌードルが世界で初めてでした。
川合: 長く保存するために、通気性のないフタの素材を見つけ出すことも課題のひとつでした。どんな素材が良いか悩んでいた時、たまたま飛行機の中で客室乗務員がくれたマカデミアナッツの容器が創業者にひらめきをもたらしました。紙とアルミ箔を貼り合わせた上ブタをカップに密着させるというアイデアは、この時、初めて生まれたのです。
川合: 上が広く底の方が狭いカップの中に、麺を入れることも難問の一つでした。麺をカップより小さくすれば、すんなり入るけれど、輸送中にガタガタ揺れて麺が壊れてしまいます。ここでひらめいたのが、麺をカップの中で宙吊りにするアイデア「中間保持法」です。
麺の直径をカップの底より大きくして、カップの中間にしっかり固定する方法です。麺がカスガイの役目を果たしカップの強度も高まります。さらに、麺の上に具をのせることができるうえ、お湯を注いだとき、麺の下にお湯がまわりこむので、麺が均一にもどるという効果もあります。
川合: エビ、豚肉、たまごなどの具は「フリーズドライ製法」(真空凍結乾燥法) で加工して長期保存できるようにしました。お湯をかけたときの戻りがよく、食感、味、色や形が損なわれない理想的な乾燥方法でした。
当時、日本の技術水準が低かったため、創業者はフリーズドライのための会社を設立して内製化を図りました。
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