モスの黒毛和牛バーガーは「690円」でよかったのか “高級路線”に踏み切れないワケスピン経済の歩き方(5/6 ページ)

» 2023年06月06日 12時40分 公開
[窪田順生ITmedia]

超高級ブランドはどうか

 そこで効果的なのが、海外戦略だ。モスバーガーは幸いにも、海外展開に力を入れている。そのネットワークを生かして、目玉が飛び出るほどの超高級ブランドを新たに立ち上げるのだ。

 例えば、黒毛和牛や神戸牛などのブランド牛と、日本のブランド野菜を用いた最高級バーガーを、日本製のビールや日本酒と味わえる、高級和食店のようなコンセプトのハンバーガー店をつくったらどうか。サイドメニューもポテトではなく、ちょっとしたツマミも出す。そういうコース料理を日本円で1万円くらいで提供するのだ。

 安いニッポンでは、そっぽを向かれる価格帯だが、米国や経済発展著しい中国・ASEANでは、一般人でも買える。それで味がしっかりしていれば、市民権を獲得できる。

海外で450店舗を構える(2022年12月末現在)

 それなりにブランドが確立したら、日本に「逆輸入」する。そうすると、アジアからの外国人観光客や、富裕層ならば「ようやく日本でも食べれるのか」という感じでファンになってくれる。海外市場を一枚かませることで、「安くてうまい」の低価格帯ブランドから、高級ラグジュアリーブランドへとスムーズに生まれ変わるというワケだ。トヨタにおける「レクサス」のようなブランド戦略をイメージしていただければいいかもしれない。

 日本はこれからどんどん貧しくなるので、低所得者のために「安くてうまいハンバーガー」を提供し続けるというのも、モスバーガーに求められる大事な役目だ。そのためには、「手作り感」や「素材の良さ」をどこかの段階であきらめなくてはいけなくなるかもしれない。

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