ただ、一方で、それをやっているだけではジリ貧だ。しかも、先ほどの黒毛和牛バーガーのように食に関わる人々や、流通、販売などありとあらゆる人の不利益につながる「価値の低下」につながってしまう。
だからこそ、一方で「食の高級化」が必要なのだ。貧しい人が多いからといって、安い食べ物ばかりを売っていると、人口が減少するこの国では経済が冷え込むだけだ。安い食事をつくるために賃金はいつまでも上がらないので、人々を貧しさからいつまでも抜け出せないのだ。この負スパイラルを断ち切るには、「食の価値」を上げていくしかない。
しかし、貧しい日本でそれをやるのは、かなりつらい戦いだ。個人経営の店や中小企業では難しい。だからこそ、モスバーガーのような体力のある巨大チェーンが率先して「食の価値」を上げていくしかないのだ。
モスバーガーが高級化に舵を切れるかは、ある意味で、日本企業がモノの価値を上げられるかという試金石だ。今後の動向に注目したい。
テレビ情報番組制作、週刊誌記者、新聞記者、月刊誌編集者を経て現在はノンフィクションライターとして週刊誌や月刊誌へ寄稿する傍ら、報道対策アドバイザーとしても活動。これまで300件以上の広報コンサルティングやメディアトレーニング(取材対応トレーニング)を行う。
近著に愛国報道の問題点を検証した『「愛国」という名の亡国論 「日本人すごい」が日本をダメにする』(さくら舎)。このほか、本連載の人気記事をまとめた『バカ売れ法則大全』(共著/SBクリエイティブ)、『スピンドクター "モミ消しのプロ"が駆使する「情報操作」の技術』(講談社α文庫)など。『14階段――検証 新潟少女9年2カ月監禁事件』(小学館)で第12回小学館ノンフィクション大賞優秀賞を受賞。
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