覇者イオン、コスモス、カインズに勝てるのか 中堅中小の「合従軍」戦略小売・流通アナリストの視点(1/4 ページ)

» 2023年06月12日 07時00分 公開
[中井彰人ITmedia]

 先般、スーパーのいなげやがイオンの子会社となって、最終的にはイオンの首都圏食品スーパーであるユナイテッド・スーパーマーケット・ホールディングスと経営統合することが話題となったが、小売業においてはM&Aによる規模拡大は珍しいことでもない。大手小売業の大半が他社との経営統合によってシェアの拡大を実現しつつ、規模の利益を活用するという経緯を経てきており、当然ながらイオンがその筆頭といっていい存在だ。

sp いなげやとUSMHが経営統合(いなげや公式Webサイトより引用)

 スーパーに限らず、ドラッグストア、ホームセンターなどの業界も上位企業のほとんどがM&Aを大いに活用してきた。図表1は各業態の売上上位企業のM&Aの経緯を抜き出したものだが、活用してきた企業が多いことが分かるはずだ。

sp 【図表1】食品スーパー、ドラッグストア、ホームセンターのM&Aへの取組姿勢(各社IR資料より著者作成)

 なぜM&Aが多く発生するのだろうか? 店舗小売業は各地で同時多発的に発祥するため、地域ごとの競争を経て勝ち残った企業が相応のシェアを獲得すると、隣の地域の勝者と戦いながらシェアを競うといった経緯を経て成長していくからだ。いわばスポーツ大会の県予選のような状態を経て、地区代表を決めるような感じといったらいいかもしれない。

 ドラッグストアやホームセンターに関していえば、既に全国大会のベスト8が決まりつつあるような状況であり、シェアに関しては、かなり上位集約が進んでいる。そのため、M&Aのパターンとしては、上位企業による下位企業の買収というのが自然と多くなるのだが、強い上位企業に対抗するために下位企業が同盟するように経営統合する、というパターンも散見される。人気漫画『キングダム』になぞらえるなら、「合従軍」が同盟を組んで、共通の脅威である「秦」に立ち向かうといったイメージでもいいかもしれない。

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