もしそのような主張が、マスコミに報道されて注目を集めるようなことがあれば、「おとり広告」問題などが再び蒸し返される恐れもある。さらに最悪なのは、裁判所が少年側の主張をある程度認めたときだ。
「確かに少年の行動によって客足は落ちたが、スシローはそれ以前からも、おとり広告問題などで信用が落ちていて客足が減っていたので、すべてがこの少年のせいだという主張は認められない」なんて感じのことが、判決文に書かれて、スシロー側の6700万円が退けられてしまったらどうなるのか。「なんだよ、スシローは業績低迷をぜんぶペロペロ少年のせいにしようとしたのかよ」なんてイメージが世間に定着する恐れがある。
裁判である以上、主張が100%認められないリスクがある。つまり、「正義はわれに」と6700万円という高額損害賠償請求をしたまではいいが、裁判所に「いや、さすがに6700万円はふっかけすぎでしょ」と否定されてしまうことで、少年の「罪」を軽くしてしまい結果、スシローの企業イメージを悪化させてしまうのだ。
誤解している人も多いが、企業危機管理というのは、悪い奴に処罰するとか、勝つとか負けるかという話ではない。「危機」が発生した時点で、企業は「負け」ている。そのダメージをいかに最小限に抑えて「いい負け方」をするかがポイントだ。
残念ながら、仮にスシローの主張が100%認められて、この少年から6700万円満額の賠償金を取れても、それは「勝ち」ではない。スシローの企業イメージが上がるわけではないし、客足が戻るわけでもないからだ。むしろ、やればやるほど、「いい負け方」から遠のいていく。
そう考えるのは(2)の『少年側に賠償金を払わせても、「スシローは安全」というイメージが回復しない』ということもある。
今回、少年の動画によって客離れが起きているとしたら、そのような人たちはスシロー側の衛生管理に疑いをもっているわけではない。「あの少年は氷山の一角で、回転寿司にはああいう悪ふざけをする迷惑客がたくさんいて、知らず知らずに汚いものを口にしているかも」という恐怖心をもっているからだ。
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