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甲子園の何が問題なのか 元「エースで4番」の学者が語るマネジメント論「任務は遂行する」「部下も守る」(2/4 ページ)

» 2023年06月19日 06時00分 公開
[鬼頭勇大ITmedia]

 厳しい上下関係の中で、渋倉さん自身、スポーツは理不尽なものに耐え、殴られ蹴られしながら勝利を目指すものだと考えるようになっていったという。転機は大学時代だ。授業で教授が「スポーツとは楽しいものである」と話しているのを聞いた。

 これまでの経験から、「スポーツが楽しいなんて、間違っている」と感じた渋倉さんだったが、学習をしていくにつれ、自身がいた環境に疑問を持つようになっていった。その後、学問と実践の場をつなぐために、研究者の道を歩んでいく。

「侍ジャパン」栗山監督が優れていた点

 最近は、少しずつではあるがスポーツ界のマネジメントも変わりつつある。

 日本代表が3大会ぶりの優勝を果たした今春のワールドベースボールクラシックで、選手だけでなく、監督を務めた栗山英樹さんに大きくスポットライトが当たったことは記憶に新しい。栗山さんのマネジメントについて、渋倉さんは「何より選手たちへのリスペクトが優れていました」と分析する。

栗山英樹さんが優れていたポイント(出所:池田書店プレスリリース)

 「監督が選手の上でも下でもない、フラットな関係性を築いていたのがポイントだと感じます。選手たちが自分よりも優れた能力や知識を持っていると認め、支援し、成長してもらう。こうした一方通行ではないマネジメントで、選手も主体性を持ってプレイできていたのではないでしょうか」

 背景には、スポーツの世界で主流になりつつある「プレイヤーズセンタードコーチング」と呼ばれる考え方も影響していそうだ。指導者と選手が上下関係を結ぶのではなく、選手を中心として周辺に指導者や関係者がネットワークのように位置し、相互に影響を及ぼしながら成長していく考え方だ。

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