【編集部より:2023年6月19日13時10分、内容の正確性を期するため、タイトル及び本文の加筆修正を行いました】
「マネジメントで重要な『人材の育成』と『結果を出す』、この2点を両立しにくくしている甲子園は、改善すべき点も多いと考えています」――そう話すのは、夏の甲子園に出場した経験がある渋倉崇行さんだ。新潟南高校(新潟市)時代、「エースで4番」としてチームを率い、1989年夏の甲子園に出場した。現在は、桐蔭横浜大学で教授を務める傍ら、専門のスポーツ心理学を基にしたコーチングに関する活動も行っている。
昨今はマネジメントや人材育成に関して企業からの講演依頼も多いという渋倉さんに、これまでの経歴とともに、これからのマネジメントのあるべき姿を聞いた。
渋倉さんが野球を離れ、研究の道へ進んだきっかけは、スポーツが本来あるべき姿と実態が乖離していると感じたことだという。渋倉さんが球児だったころは、今以上に理不尽な指導が当たり前の時代だった。背景には「勝利至上主義」がある。
「高校野球では甲子園に出場し、優勝するという大きな目標がある中で勝利至上主義がはびこっています。指導者は限られた期間で成績を出すために、どうしても選手に厳しく当たってしまいがちです」
甲子園に限らず、スポーツの大会はトーナメント形式で、一度負けたら終わりなことが多い。指導者は手っ取り早く結果を出すために、罰を原動力として選手の動機付けを行ってしまいがちだ。
また、効率的なマネジメントをするために、監督やコーチが偉く、選手はそこに従うものだという関係性を築く。具体的には、怒鳴ったり暴力を振るったりしてしまう。渋倉さんのところにも「選手になめられないようにするには、どうすればよいか」といった質問をする指導者は多いという。
こうした上下関係があると、コミュニケーションが一方的になってしまう。指導者が出した指示に対し、選手が「もっとこうすればいいのに」と思っていても伝えることができない。
本来、マネジメントとは人材の育成や活用を通し、最良の結果を目指すという“二兎”を得るものであるはずだ。その観点から考えると、あるべき姿からは程遠いといわざるを得ない。
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