昨今はリモートワークが進んだこともあり、減少したコミュニケーションを補おうと「1on1」を設定する企業も増えてきた。リクルートマネジメントソリューションズが2022年に実施した調査によると「3年以内」に1on1を導入した企業は6割超に上る。以前から導入していた企業と合わせ、95%近くが導入している状況だ。
一方、Mentor Forが部課長職以上の管理職を対象として4月に実施した調査では、「本音が引き出せない」という悩みが最も多かった。メンバーの本音を引き出すにはどうすればいいのか。渋倉さんは2つのポイントを挙げる。
1点目は、信頼関係を構築すること。そのためには、社員の幸せを心から願い、また自分の考えていることをしっかり届けることだという。2点目が、「質問力」を鍛えることだ。優れた質問をすることで、本音を引き出すだけでなく、自身が見えていない点を明らかにし、メンバーが自ら考える環境をつくることができる。
渋倉さんは、野球の指導者と接する中で「教育性と競技性、どちらを重視すればいいのか」と質問されることが多いという。ビジネスに敷衍(ふえん)すれば、業績を出すのか、それとも後進の育成に努めるのか、と換言できる。
「人材の育成と結果を出すこと、そのいずれかではなく、いずれも大事なのがコーチングであり、マネジメントです。結果を出すことだけに集中してしまうと、いつかその指導者や管理職がいなくなったときに続かなくなってしまいます。いかに、状況の変化に応じて戦える自律したメンバーを育てるか。そのためには短い時間軸ではなく、長い目で考え、行動することが重要です」
人気漫画『ジョジョの奇妙な冒険』の第5部「黄金の風」に登場する、主人公の上司に当たるブローノ・ブチャラティの名ぜりふに「『任務は遂行する』『部下も守る』 『両方』やらなくっちゃあならないってのが『幹部』のつらいところだな」というものがある。業績を出しながら人材育成を遂行する、会社において「エースで4番」ともいえる管理職の心境をよく表している。メンバーの心のジッパーを開きながら、そしてともに成長ながら、輝く栄冠をつかみたいところである。
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