東京23区にも“秘境”があった! 秘境駅になってしまう大きな2つの要因とは?全部で5駅(2/3 ページ)

» 2023年06月28日 07時00分 公開
[中川寛子ITmedia]

秘境駅の多くは「広がれない」場所に立地

 乗員人員が少ない駅の多くはこうした広がれない場所に立地している。例えば山手線で最も乗車人員が少ないのは鶯谷駅(2万5707人)だが、この駅は武蔵野台地上にあり、駅の背後には上野公園、谷中墓地、東京芸大。広がりようがない。また、広大な線路を挟んで反対側はホテル街で、その先には交通量の多い言問通りが走り、ここでも街は分断される。山手線では目白駅(3万7536人)も乗車人員が少ない駅だが、駅前に学習院大学があることを考えると「そうか!」と思われるはず。

hikyo 鶯谷駅(2023年5月著者撮影)

 23区内で最も乗車人員が少ないJR駅は京葉線の越中島駅(5910人)だが、こちらは東京海洋大学キャンパス、同学生寮、同職員宿舎などの真ん中にある。それ以外には小中学校、倉庫などに取り囲まれており、今後も乗車人員は増えそうにはない。

 秘境駅ラリーに戻ると5駅のうち、埼京線の浮間舟渡駅(2万1892人)も同様に広がれないことが理由で秘境駅とされた。駅北側にはロータリー、道路を挟んで浮間公園が荒川まで続いており、南側には新河岸東公園、中学校にテニスコート、公務員住宅、印刷所があって新河岸川である。

hikyo 浮間舟渡駅(2023年5月著者撮影)
hikyo 浮間公園(2023年5月著者撮影)

 だが、埼京線でいえば一番乗車人員が少ないのは赤羽駅との間にある北赤羽駅(1万9078人)で、こちらは駅が新河岸川上にある。北側には荒川河川敷、荒川、駅の高架下やその周辺には商店もあるが、これ以上の発展は難しいように思われる場所である。 

hikyo 北赤羽駅(2023年5月著者撮影)

 同じく秘境駅とされた東海道本線(*2)西大井駅(1万6028人)も駅東側には西大井広場公園があり、その先では現在ニコンが新本社を建設中。周囲にも関連の施設が多く、広がる土地がない駅であることは確かだ。ただ、西大井駅は横須賀線、新宿湘南ライン、相鉄・JR直通線など多数の列車が通っており、新本社が完成・稼働し始めれば人が増え、乗車人員が増える可能性はある。

【*2:正確には東海道本線の支線で品鶴線の通称がある。】

hikyo 西大井駅(2023年5月著者撮影)

 西大井駅は1986年と、東海道本線としては遅い時期に誕生した駅で、この点に着目すると乗車人員の少ない駅は京葉線や埼京線など比較的新しい路線に多いことが分かる。すでにできあがっている土地に駅を配するわけだから、あまり選択の余地はなく、広がりようがあろうがなかろうが作るしかなかったのではないかと思われるのだ。

 逆に市街化の進む前の平らな土地に敷設された中央線は千駄ヶ谷駅(1万6452人)、信濃町駅(2万5572人)という、新宿御苑、神宮外苑、赤坂御用地など広がれないエリアを抱える駅があるものの、総じて乗車人員は多い。

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