禁煙の宿で注意された客が「低評価」 “逆ギレ口コミ”をどう防げばいいのかスピン経済の歩き方(3/6 ページ)

» 2023年07月11日 11時05分 公開
[窪田順生ITmedia]

逆ギレ口コミを防ぐことは難しいのか

 ご存じのように、日本では三波春夫氏の「お客様は神様」がゆがめられて社会に広まったせいもあって、客商売というのは、どんなに客に理不尽な要求をされて、横柄な態度をされても嫌な顔をせずに対応をするものだという考えが強い。そういう「顧客至上主義」が社会にビタッと定着しているので、店や宿側が客の考え方や立ち振る舞いを批判してはいけないという不文律がある。

 それはつまり、いくらトラブルがあった相手からの嫌がらせ的な口コミだったとしても、客商売の人間がそれを公の場で指摘すると、「客商売なのにずいぶんと調子に乗っているじゃないか」と店や宿の態度を批判する人がいるということだ。

 実際、西屋のケースでも宿や女将の対応を批判する人たちがわずかながら存在する。喫煙所をつくるなどの対応をしていなかったこの宿は「おもてなし」の精神がないという人もいる。また、いくらルールを破ったとしても、客の悪口をSNSでさらすのは客商売として失格ではないかという人もいるのだ。

「西屋」のWebサイトに「タバコを販売していない」ことが書かれている(出典:西屋のWebサイト)

 俳優の香川照之さんが銀座の高級クラブで、女性にセクハラをして髪をつかんだ際にも、店側の対応を批判する意見が出た。銀座の高級クラブは、香川さんのようなVIPが楽しくハメを外せる場なのだから、このようなトラブルがあっても内々で処理すべきであって、外部に流出させたのが「高級クラブ失格」だというのだ。

 このような「お客様は神様」的な思想が根強い日本で、マナー違反をする迷惑客たちの逆ギレ口コミを防ぐことはできるのか。ひとつの案として、飲食店や宿が、レビューをする客側を、匿名で評価できるようなシステムがあってもいいのでは、という意見もある。

 だが、筆者はこれでは逆ギレ口コミを防ぐことは難しいと思っている。レビューをする客側は、飲食店や宿と違って、どんなに酷評されたところで別に実害はない。多少は逆ギレ口コミの信ぴょう性をおとしめることができたとしても、「抑止力」につながらないからだ。

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