こうして完成した大人の流しそうめんは、ドウシシャが量販店向けにかき氷器を長年販売していた実績もあり、スムーズに売り場に置いてもらえたという。
また、同社はこの当時、大人向けのかき氷器を取り扱っており「Otona」ブランドを訴求していた。子ども向けというイメージの強いかき氷を、大人にも楽しんでもらいたいというのが狙いだ。大人の流しそうめんも同様のブランドとしている。そうした意味でも、シナジーを生かしやすい環境にあった。
川出氏は、大人の流しそうめんは「家族で楽しむ」シーンが最も多いのではないかと分析する。当初は子どものいない夫婦や大学生をターゲットとしていた。しかし、都市部のマンションやアパートで暮らすファミリー層が増えていたこともあり、省スペースで楽しめる同商品が支持された可能性がある。
大人の流しそうめんは18年発売当初からモデルチェンジはしていない。今後、改良するとしたらどういったことが考えられるのか。川出氏は「支柱をより高くして、そうめんが流れるスピードを速くする。そうすればエンタメ性が高まるのではないか」といった構想を話した。
最後に、筆者が「大人の流しそうめんは模倣しやすいように感じる。ロングセラー商品となっているので、他社が似たような商品を投入する可能性はないか?」と尋ねた。川出氏は「流しそうめん器は、日本国内だけで売れるニッチな商品だ。金型をつくろうと思ったらそれなりのコストがかかる。ある程度売れる見込みがないと採算が合わないので、参入は簡単ではないだろう」との見解を示した。
流しそうめん器という比較的ニッチな分野で、ある程度の地位を確立した。そして、量販店では自社かき氷器の隣に置いてもらえる――。大人の流しそうめんがロングセラー商品に育った背景にはこうした事情もあったようだ。
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