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メドレー社長に聞く 上場後もCAGR40%超を継続する「一発逆転を狙わない経営」新連載「CEOの意志」(3/4 ページ)

» 2023年07月18日 08時00分 公開
[乃木章ITmedia]

解像度高く自分たちのマーケットを分析する

クラウド型医療システム市場の広大な市場機会(メドレーの2023年12月期第1四半期決算資料より)

嶺井: 先ほどの「盛らない」や「解像度高く」という言葉がまさに当てはまると思ったのが、23年12月期第1四半期決算資料で「クラウド型医療システム市場規模」のマーケットサイズを書いている部分です。医療システム全体が4675億円の市場に対して、自社が手掛けるクラウド型医療システムの市場は135億円と見積もっています。

 その上で30年には453億円まで市場規模が広がると、解像度高く自分たちのマーケットを見ています。普通であれば投資家からの評価を得ようと、周辺領域も盛り込んで「われわれの市場はこれだけ大きいんですよ」と、できるだけ大きな数字でアピールしてしまうはずです。にもかかわらず決して盛らず、投資家に伝えていますよね。

瀧口: 実態以上に大きく見せても、その評価は長くは続かないものです。また、今の市場が小さくても、それが大きくなると信じているなら堂々とそのまま説明すればよい。それに投資家との建設的な議論のためにも、自分たちの感覚値と大きくズレる数字を前提としたコミュニケーションは控えています。

嶺井: なるほど。組織はどのように拡大していったのでしょうか?

瀧口: まず組織にひもづく事業計画の話からさせていただくと、例えば年間売り上げが30億円のときに、「いつまでに1000億円を達成する」という目標を社内で発表したんですね。そのときに上場後も高成長を続けた企業群が、30億円の事業規模から1000億円に到達するまでにかかった期間や取り組みをまとめました。

 他社の過去の経験をインタビューなどで外から正しく理解するのは困難ですが、成功した他社の取り組みで重要な部分だけでも理解して、正しい努力ができれば、再現性は十分にあると思います。企業群には明らかな共通点があるからです。

 そして、それらの会社には優秀な人たちが集まって日々格闘していたわけですから、自分たちの能力を過信してはいけません。もちろん、成功した先輩企業以上の速さでできたら最高ですし、かなうことならば自分たちはさらに特別な成果を出したい。とはいえ、成功した他社が要した期間の平均値が取れれば、十分成功です。

嶺井: 成長速度を上げるために、急成長した会社をベンチマークして、研究したんですね。この人たちがこういう形で成長できているんだから、自分たちも時間をかければできるはずだと。

瀧口: そうです。多くの方にイメージをつかんでいただくために、アバウトに説明すると、インターネット分野における時価総額1000億円の成長企業の人員数は1000人、1兆円の企業では5000人くらいの規模が多いです。なので10年で時価総額1兆円を達成するなら、年400人くらい純増させていくことになります。退職率を仮定すれば、採用数が出せます。そうした一つ一つの数字目標を現実的に達成できるように皆で努力していくわけです。

嶺井: 実際に、どれくらいの規模まで会社を成長させたいと考えていますか?

瀧口: ここで終わり、というのはなく、同規模の企業群よりも成長し続ける会社をつくりたいと考えています。売上高が1000億円、時価総額1兆円企業になったとしても、さらにそこから10倍伸びる余地のある会社をつくりたい。ほとんどの会社はできないことなので、そのために、何が必要なのかを探して、その全てを早め早めに準備しています。

 言い古されていますが、最も大切なのは、長期的な実需が見込める領域でストック性のある事業群でポートフォリオを組むことでしょう。シナジーがあって、自社だから出せる+α(プラスアルファ)があることも肝要です。意図的に成長市場に居続けるためには、日本にとどまらずにグローバルでサービスを提供できる会社になることも必須条件です。

 言うは易く行うは難しです。本当に大変だなと日々痛感しています。実現するためには、今存在しないほどの難易度の高い仕事、サイズの大きな仕事におけるハイパフォーマーを抱え続けなければなりません。このために当社は長年、ハイパフォーマーが働きやすい環境づくりに取り組んできました。他にも、会社の成長のために2〜3年後に必要になる人材が2〜3年早く現れた場合は、報酬面でもその時点のレンジを超えた提示をします。とにかくやるべきことを徹底的にやらなくてはなりません。

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