“松屋風”ロモサルタードが好評 高いレシピ開発力を見せつけたと言えるワケ長浜淳之介のトレンドアンテナ(4/6 ページ)

» 2023年07月20日 05時00分 公開
[長浜淳之介ITmedia]

ペルー料理店では顧客層が拡大

 さて、そもそものロモサルタードとは、どういう料理なのか。東京・原宿で10年営業しているペルー料理の名店「ベポカ」に聞いてみた。オーナーシェフの仲村渠ブルーノ氏は、ペルー生まれの日系三世だ。

ペルー料理の名店、ベポカ

 「ロモサルタードは、牛のヒレ肉と野菜を強火で炒めた中華系の料理。家庭でも作りますが、ペルーではよく食べにも行きます。その店、その家ごとの味があります」(同店・広報)

 ロモサルタードはペルーの一般的な料理だが、味付けが各人各様で違うということだ。牛のヒレ肉は高いので他の部位を使うこともあるが、豚はまず使わないという。

 そもそも「ロモ」は牛のヒレ肉やサーロインという意味だ。「サルタード」は炒め物を意味する。

ベポカのロモサルタード

 代用として鶏肉を使うことはあって「ポヨサルタード」と呼ぶ料理になる。

 華僑の持ち込んだ中華の炒め技術を使うので、家庭で作るのはかなり難しく、どのペルー料理店でも出せるわけではないそうだ。

 ペルーでは一般的にしょうゆを味付けに使う。よく使用され、味の決め手となっているのが、現地の「kikko(キッコー)」というしょうゆ。これはキッコーマンとはかなり違っている。九州のしょうゆに似ていて、甘めの味となっている。

 クミンを使う人は多くない。正統派では使わない。また、酢に関してベポカでは赤ワインのビネガーを使っている。

 同店によれば、ペルー料理店は20〜30年前から日本にはかなり存在していたという。出稼ぎで日本に来ている日系ペルー人向けの店で、工場の裏手によくあった。日本人が行くようなところではなかったのだとか。日本の製造業が盛んな頃は、人手不足解消のために、南米のペルーやブラジルから多くの日系人を受け入れていた。

 ところが、リーマンショック以降は逆に人が余るようになり、日系人が次々と帰国したので、それ以降は減っていたという。

 しかし、ペルー料理に熱心に取り組むメキシコ料理店が出てきたり、先述したCentral系列の「MAZ Tokyo」が22年7月に東京・赤坂見附にオープンしたりと、ペルー料理の魅力が少しずつ知られるようになってきている。

 ベポカでも、「いまだにはじめましてのお客さまが多くいらっしゃる」と顧客層の拡大を実感している。

ベポカの旬の鮮魚のセビチェ。ペルーではセビチェ専門店も多い
ベポカ、カナリオ豆とほうれん草のスープ
ベポカのペルーの果物、ルクマのアイスクリーム

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