“松屋風”ロモサルタードが好評 高いレシピ開発力を見せつけたと言えるワケ長浜淳之介のトレンドアンテナ(6/6 ページ)

» 2023年07月20日 05時00分 公開
[長浜淳之介ITmedia]
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松屋風の創作料理

 東京都八王子市にあるペルー料理店「Misky」でも、ロモサルタードを注文してみた。上記2店と同じように、日本で生まれ育ち、日本で暮らしてきた筆者にとっても、特に癖の強い味でもなく、普通においしく食べられた。しょうゆ味は感じるが、松屋風のように酢の酸味、クミンのエスニックな味、にんにくがガツンと来るという感じではない。酢やスパイスやにんにくは隠し味といった感じだ。

Misky
Miskyのロモサルタド

 ペルー人のシェフは「90年代くらいまでしばらく政情不安が続いて、多くのペルー人が国外に出た。それでペルーの料理が世界に広がって、ペルーが美食の国と言われるようになったのではないか」と語った。

 Miskyのメニューブックを見ると、イタリア料理のようなパスタもあれば、日本の刺身やフランス料理の魚介のマリネに影響を受けた「セビーチェ」という料理もある。中華風のチャーハンのような料理もある。南米原産のキヌアのようなスーパーフードも豊富。飲み物も、ペルーで人気のインカ・コーラ、紫とうもろこしのジュースなど独特な飲料がある。

 現地のもともとあったインディオの食文化に、西洋、中華、日本などさまざまな料理の要素が加わって、独自の進化を遂げたところに、ペルー料理の魅力がある。

Miskyの海鮮チャーハン、チャウファ・デ・マリスコス

 3つのペルー料理店を食べ歩いたが、ロモサルタードは南米の料理とはいえ、日本から持ち込まれたしょうゆが味のベースになっており、いかにもエスニックな料理ではない。日本人の口に合わないものとは思えなかった。

 元の料理の癖が強いから日本人の舌に合うように変えた、現地化された和風ペルー料理が“松屋風”ロモサルタードなのではない。ロモサルタードからインスピレーションを得て、独特な松屋風の創作料理を生み出したものだった。

 世界の料理シリーズでも屈指の人気メニューとなったという点で、松屋のレシピ開発力は賞賛に値する。しかしながら、果たしてロモサルタードの範疇(はんちゅう)に入るものであったのかは、疑問が残った。それでも「松屋のような大手チェーンがロモサルタードに取り組んでくれたおかげで、ペルー料理の知名度が上がった」と、ペルー料理店では松屋フーズの取り組みに総じて好意的であった。

世界一のレストラン、ペルー・リマのCentral(出所:プレスリリース、以下同)
ペルー・リマのCentral系列、MAZ Tokyoの料理(イメージ)

著者プロフィール

長浜淳之介(ながはま・じゅんのすけ)

兵庫県出身。同志社大学法学部卒業。業界紙記者、ビジネス雑誌編集者を経て、角川春樹事務所編集者より1997年にフリーとなる。ビジネス、IT、飲食、流通、歴史、街歩き、サブカルなど多彩な方面で、執筆、編集を行っている。著書に『なぜ駅弁がスーパーで売れるのか?』(交通新聞社新書)など。


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