長野の老舗葬儀屋は、なぜ社長交代でDXに成功したのかレガシー産業とDX(1/4 ページ)

» 2023年07月21日 08時00分 公開
[波戸崎 駿ITmedia]

 海外と比較してデジタル化の後れをとっている日本だが、ここ数年変化が見られている。

 電通デジタルが4月に発表した「日本における企業のデジタルトランスフォーメーション調査(2022年度)」によると、DXに着手している企業は84%、成果が出ていると答えたのは75.4%という結果に。推進する上での障壁も減少傾向にあり、DXは3年間のコロナ禍を経て、定着および一般化しているという。

日本企業のDX取り組み状況(出典:電通デジタル「日本における企業のデジタルトランスフォーメーション調査(2022年度)」)

 多くの企業がDXを推進する中で、過去から受け継いだレガシーを第一に考え、業務内容やフローをアップデートすることなく前例を踏襲し続ける企業も多い。紙でのやりとりが必要最小限である状態や、データがきちんと保管、検索できる状態であることをDXの第一段階だとしたとき、「レガシー産業」と呼ばれるような、不動産業、建築業、製造業などは対応が後手に回っている印象を受ける。

 業界における平均年齢の高さは関係していると思うが、トップの考え方や意思が与える影響は大きい。加えて、トップの意思をくみ取り、現場で推進、実現できる人材が社内に1人でもいるかも重要である。

社長交代をきっかけにDXを推進

 弊社のクライアントである、長野県に拠点を置く老舗葬儀屋のDX事例を紹介しよう。

 この会社は手書き文化が根強く残っており、ほとんどの情報が紙で管理されていた。それどころか、最新の情報が集約されているのは、オフィスに設置されたホワイトボードという状態であった。

 葬儀の問い合わせが入ると、その情報はホワイトボードに記載される。担当者にはホワイトボードの写真データが共有されるフローが何十年も運用されてきたという。葬儀は昼夜問わず依頼が入るため、夜間や休日など、オフィスにいないときには情報の確認ができず、情報共有までにタイムラグが発生するなど課題は多かった。社長交代を機に、ついにDXに取り組むことになった。

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