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人的資本経営の要は「管理職」 現場と経営をつなぐマネジメントのポイントを徹底解説会社全体で考える「人的資本」(4/4 ページ)

» 2023年07月21日 07時00分 公開
[古田勝久ITmedia]
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心理的安全性の高い職場づくり(土台)

 その他、管理職が取り組むべきこととして「心理的安全性の高い職場」づくりがあげられる。少子高齢化の影響による労働人口の減少は、多くの企業において採用難・人材定着の不安定さとして経営課題になっている。その結果、若手から経営者まで今いる人材全員が活躍する「全員活躍の経営」を目指す時代といえる。

 事業環境の変化が速く、働き手の価値観も多様化している中で、全員活躍を目指すには、顧客志向で誰もが本音で話し合える健全な職場風土づくりが不可欠だ。人的資本経営の本質は、個が持つ強みを最大限に生かすとともに、個と個を組み合わせて新しい価値を生み出していくことである。そのため、誰もが本音で話し合いができる心理的安全性の高い職場づくりこそが人的資本経営の土台になる。

 もちろんそれは、何でも許される「ぬるま湯」組織をつくることではない。顧客価値を高めるために、本音で議論し行動できるようにすることが目的だ。

 心理的安全性を高めるために重要なのは「自己開示」と「雑談」。管理職自身が自己開示し、1on1や会議の冒頭などで何でも話せる雑談のタイミングを意図的に設け、顧客志向で全員が本音で議論できる職場づくり・組織風土改革を実行する必要があるだろう。

経営状況を把握できる大局観(全体最適思考)

 ここまで、管理職が人材の強みを生かすために必要なスキルとして「人材データ活用力」「心理的安全性の高い職場づくり」をあげてきた。最後に付け加えたいものが「経営状況を把握できる大局観」だ。全体最適思考ともいえる。

人的資本 (画像提供:ゲッティイメージズ)

 管理職は経営と現場をつなぐ要の役割を担っているが、事業環境が急速に変化する今、経営者だけではなく各部門の管理職も全社を俯瞰(ふかん)できる大局観を持つ必要がある。

 会社全体を俯瞰する視点で自部門の位置付けや役割などを認識し、人的資本経営を推進しようとする経営者と、人事部門の施策をひも付けながらチームをマネジメントするスキルが求められる。

 大局観を持つためには、まずは会社・経営トップの基本路線(方針)を理解することから始まる。経営トップの方針には、策定された背景や理由、プロセスがあり、何よりも経営トップの思いが込められている。それぞれを各職場の状況や課題に応じて、部下が理解できるように、かみ砕いて伝えていくことこそが管理職の役割である。

 つまり、管理職は会社・経営トップの基本路線(方針)から、自部門に対する期待値を正しく理解し、その期待値を満たすために人的資本をどう活用していくかを考えなければならないのである。


 人的資本経営を経営者と人事部門だけで進めていては、当然ながら現場が置き去りにされてしまう。そこで大きな役割を果たすのが管理職だ。会社・経営トップの基本路線(方針)を正しく捉え、全員活躍に向けて心理的安全性の高い職場をつくり、データを活用して人的資本の価値を向上させながら成果を出すためにOODAループでのマネジメントを行っていくことが人的資本経営には不可欠なのである。

 言わずもがな、管理職自身も貴重な人的資本だ。まずは、管理職自身のこれまでの価値観を180度転換し、マネジャーとして人的資本の価値を向上させていくことにチャレンジしていただきたい。

著者プロフィール

古田勝久(株式会社タナベコンサルティング エグゼクティブパートナー)

自動車部品メーカー、食品メーカーの人事部門にて採用・人材育成・人事労務業務を経て、タナベコンサルティングへ入社。

現場で培ったノウハウをもとに、戦略的な人事・組織の実現に向けて経営的視点からアプローチし、大企業・中堅企業の成長を数多く支援している。


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