では、適切に素材を「選びとる」にはどうすればいいのか。
ここでいう素材は、文章でいえば、盛りこむべき事実やデータといった情報、考えや思いなど……とお話ししましたが、素材のもとは、記憶を含めて、世の中のいたるところにあります。
でも、それが必要なものかどうかを見きわめるには、判断のもととなる“ものさし”が不可欠です。
もうお分かりかと思いますが、この選びとるため“ものさし”となるのが、「伝えるべきこと」なのです。
それが「なんとなく分かっている」くらいの状態だと、基準が曖昧ですから、素材を適切に「選びとる」のは難しい。
でも、「伝えるべきこと」がはっきり分かっていると、“ものさし”が明確ですから、「はっきり選びとる」ことができるようになります。「伝えるには、この情報が必要だ」と、適切な素材を選びとることができる。
「伝えるべきこと」は、いわば「伝え方」の扇の要のようなものなのです。そこが定まらなければ、文章であれ、お話であれ、なんであれ、適切に「伝える」ことが難しくなります。
だからこそ、なによりも最初に「伝えるべきこと」を明確にする必要があるのです。
そして、注意しなくてはいけないのは、「伝えるべきこと」にも、きちんと機能する、つまりは「伝わる」を生みだすことができるものと、そうでないものがあるということ。
まさに、伝えるコミュニケーションの生命線ですが、そこに注目して、次回以降は、本当に機能する「伝えるべきこと」を〈メッセージ〉と位置づけ、その実体と効用、そして導きだし方について考えていきます。
【まとめ】
文章を書くとは「整理整頓」すること。
この記事は、『「伝え方――伝えたいことを、伝えてはいけない。』(松永光弘/クロスメディア・パブリッシング)に掲載された内容に、編集を加えて転載したものです。
1971年、大阪生まれ。これまで20年あまりにわたって、コミュニケーションやクリエイティブに関する書籍を企画・編集。クリエイティブディレクターの水野学氏や杉山恒太郎氏、伊藤直樹氏、放送作家の小山薫堂氏、コピーライターの眞木準氏、谷山雅計氏など、日本を代表するクリエイターたちの思想やものの考え方を世に伝えてきた。自著に『「アタマのやわらかさ」の原理。クリエイティブな人たちは実は編集している』(インプレス、編著に『ささるアイディア。なぜ彼らは「新しい答え」を思いつけるのか』(誠文堂新光社)がある。
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