「高校生の就職先」どうやって決まるの? 大学生とは違う「3つ」の仕組み経済の「雑学」(2/3 ページ)

» 2023年07月27日 09時00分 公開
[土肥義則ITmedia]

高校生にたちはだかる3つの壁

 特殊な仕組みは大きく分けて、3つあります。1つめは、求人票の情報量が少ないこと。企業はハローワークに求人票を登録して、それを学校に届けるわけですが、その情報量はA4の用紙に表裏のみ。文字のみなので、企業の魅力がいまひとつ伝わってきません。

 ただ、今の時代はネットを使えば、興味のある企業のことはだいたい調べられます。というわけで、この問題はそれほど大きくはないでしょう。

高校生が就職するには……(提供:ゲッティイメージズ)

 2つめは、就活のスケジュールが短いこと。企業の求人票は7月1日に公開され、応募書類の提出は9月16日(一部の県では違う)。生徒はその期間にテストもありますし、夏休みもあります。このほかの行事を考えると、実質1カ月半ほどで「自分はこの会社を受ける」と決断しなければいけません。

 大学生の場合、1年生からインターンシップに参加したり、企業の研究を始めたりするケースも珍しくはありません。そのように考えると、高校生が“考える時間”は短いと言わざるを得ません。

(出典:ゲッティイメージズ)

 3つめは、一人一社制であること。「ん? なにそれ?」と感じられた人もいるかもしれませんが、読んで字のごとく、高校生が応募できるのは「一人一社」と決まっているのです(応募開始から一定期間)。リクルートワークス研究所の調査によると、55.4%の高校生が「1社だけを調べてみて、1社だけを受けて、1社に内定した」という結果が出ました。

約半数が「1社だけを調べてみて、1社だけを受けて、1社に内定した」(出典:リクルートワークス研究所
「情報量が不十分だった」という高校生は多い

 前近代的な仕組みが残っている印象がありますが、この制度にもメリットがあります。1つめは、学校の先生の負担が減ること。先ほど紹介したように、学校に届いた求人票を先生は生徒に紹介します。いわゆるマッチングの役割があるので、生徒が「この会社も、あの会社も」と言い出すと、先生の仕事は増えるばかり。とはいえ、生徒の一生を左右することでもあるので、そこは現場でうまくやりくりして、なんとかしなければいけない問題でもあります。

 もう1つは、内定の偏りをなくすこと。高卒の求人数は過去最高となったわけですが、景気がちょっと悪くなると、その影響をすぐに受けるのです。就職が難しい状況の中で、優秀な生徒が複数の内定を手にするとどうなるか。高校を卒業したものの、就職先がないといった人が続出するかもしれません。そうした事態を防ぐためにも、この一人一社制は一定の役割があるようです。

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