さて、そこでみなさんが気になるのは、レジ前に「PayPayご利用できます」と明記されているのに、なぜこんなにも多くの人々が「不幸」になってしまうのかということではないか。
いろいろなご意見があるだろうが、個人的にはこれらのスーパーが「イオングループ」であることが大きいのではないか、と考えている。
首都圏で主に展開しているマルエツは、2015年よりイオングループに入っている。フーディアムも同様で、ダイエーグループ自体が15年からイオングループに入っている。イオングループにはWAONやAEON Payという独自の決済システムがある。
そうなればPayPayよりも自社のシステムを使ってほしいと考えるのは当然だろう。つまり、イオングループのスーパーのレジで渋滞が起きるほどPayPayが使いにくいのは、自社サービスに誘導をするために、意図的に「不便」にしている可能性があるのだ。
「バカも休み休み言え! “流通の巨人”と呼ばれるイオングループがそんなセコいことをするか。PayPayとイオンのシステムの相性が悪いとかで、たまたまこんな面倒くさいことになっているだけだ」
そんな風に怒るイオンファンも多いだろう。もちろん、筆者も「お客さま第一」を掲げるイオングループが、そんな客の負担を増やすようなことを意図的にやるわけがないと信じている。が、イオングループが掲げる「デジタル戦略」を聞くと、「もしかしたら」と勘繰ってしまう部分もあるのだ。
ご存じの方も多いだろうが、イオングループはこれからの成長戦略の柱として「デジタルによる顧客体験」を掲げている。イオングループのDX担当者はメディアの取材にこう答えている。
「イオンはグループとして、リアル店とデジタルを融合させたシームレスな体験を顧客に提供していくと(2021〜25年度の)中期経営計画でうたっている。2021年9月に提供を開始したアプリ『iAEON(アイイオン)』は、そうした体験を提供するための、グループ共通のタッチポイントという位置付けだ」(日経クロストレンド 22年2月2日)
iAEONはWAONやAEON Payといった決済のほか、ポイントや店舗情報が一つになった「イオンのトータルアプリ」である。ただ、実はこのアプリはグループにとってそれ以上の大きな役割がある。
それはグループ内で分散していた顧客情報を一つに集約することだ。
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