信託型ストックオプション、国税庁の“突然見解”で14億円特損 PKSHA Technology

» 2023年08月15日 12時30分 公開
[ITmedia]

 「信託型」と呼ばれるストックオプション(信託SO)について、国税庁が実質的な給与所得と見なす見解を示したことを受け、AIベンチャーのPKSHA Technology(東証スタンダード)は8月14日、2023年9月期第3四半期決算で14億6600万円の特損を計上すると発表した。権利行使済みの信託SOについて、役職員に代わって源泉所得税を負担するためという。

 信託型ストックオプションは近年、スタートアップで導入が進んでいる。発行時に割当先を決める必要がなく、入社時期によらず、行使価格を時価よりも低い水準で維持できるといったメリットがある。十分な報酬を確約できない黎明期のスタートアップにとって、役職員のインセンティブになると注目されている。

 そうした中、国税庁が5月、信託型SOは「労務の対価に当たり、給与として課税される」という見解を発表。これまで信託型SOの場合、税負担は株式売却益の20%とみられていたが、給与と見なすと最大55%になる。国税庁は企業に対し、過去に権利行使済みの信託SOについて、源泉所得税の支払いを求めている。

 国税庁の見解を受け、PKSHA Technologyは外部専門家と協議・確認し、源泉所得税の納付を決めた。当初想定していなかった追加の負担が役職員に生じないように、求償権の一部を放棄。役職員の代わりに、会社側が税を負担する。これに伴い、23年9月期第3四半期決算で14億6600万円の特損を計上する。

 同社はこれら信託SOへの対応は今回で完了し、今後も活用の予定はないため、損失は一過性のもので、グループの事業成長に影響を与えるものではないとしている。

photo PKSHA Technologyの発表より

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