路面電車「宇都宮ライトレール」開業 使命は「渋滞ガチャ」解消も、課題ずらり宮武和多哉の「乗りもの」から読み解く(2/4 ページ)

» 2023年08月29日 07時30分 公開
[宮武和多哉ITmedia]
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深刻な「渋滞問題」 ライトレールでどう変化する?

 宇都宮ライトレールの開業により、渋滞問題はどれくらい改善されるのだろうか。地元住民のヒアリングなどを通じて分析してみた。

 宇都宮・芳賀エリアをクルマで東西移動するにあたって、ネックとなるのは、利根川水系・鬼怒川を渡る4つの橋(板戸大橋・柳田大橋・鬼怒橋・新鬼怒橋)だ。

 工場に出勤するため、宇都宮駅側からは毎朝通勤のクルマが押し寄せ、それぞれの橋ごと、朝晩ごとに前後2キロほどの渋滞が常態化しているという。これらはHONDAの工場以外のクルマ通勤が原因の渋滞もまとめて「HONDA渋滞」と呼ばれている。

宇都宮ライトレール 鬼怒川にかかる橋の前後では、朝晩ごとに渋滞が発生する。地理院地図より筆者加工

 工業団地に通勤する地元住民によると「普段なら川を挟んで30〜40分で済む通勤が、日によっては60〜120分かかる」ことも。その所要時間は非常に不安定で「平日朝に雨が降ると高確率で事故が起こり、所要時間も伸びる」そうだ。この渋滞ガチャを回避するために、家を早朝6時台前半に出て、芳賀町のどこかにクルマを停めて始業前まで寝る――なんてことも。

 自家用車だけでなく、各企業の通勤送迎バスもこの橋を通る。他県から新幹線で工業団地に通う工員・技術者も多い。

宇都宮ライトレール 宇都宮駅東口の企業送迎バス乗り場。平日朝は常に数台が並んでいる

 宇都宮ライトレールの開業に伴い、HONDAは宇都宮駅からの送迎バスを廃止。1日1200人の通勤、出張利用者の移動を宇都宮ライトレールに委ねるという。

 なお宇都宮ライトレールは、全区間の7割が路上を走るとはいえ、大きな交差点は立体交差や専用の軌道で越えてしまうなど、その仕様は都市部の鉄道に近い。クルマで30〜120分の「渋滞ガチャ」区間は、鬼怒川にかかる宇都宮ライトレール専用の橋を渡り「約40分程度で通過」という目算を立てて、安定して移動できるようになる。

宇都宮ライトレール 鬼怒川を渡る「宇都宮ライトレール」車両。ものの1分で通過してしまう
宇都宮ライトレール 清原工業団地「長府製作所」の工場横を走るライトレール車両

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