路面電車「宇都宮ライトレール」開業 使命は「渋滞ガチャ」解消も、課題ずらり宮武和多哉の「乗りもの」から読み解く(3/4 ページ)

» 2023年08月29日 07時30分 公開
[宮武和多哉ITmedia]
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街の魅力アップに貢献できるか?

 宇都宮市としても、宇都宮ライトレールによる渋滞ガチャの改善によって、宇都宮駅東側エリアの価値を維持することを狙っている。宇都宮の古くからの中心地が駅西側(二荒山神社・東武百貨店など)とすれば、高度成長期以降に急激に発展したこのエリアは「街の今後の成長エンジン」だと言えるだろう。移動時間を読める宇都宮ライトレールを導入する必要があった。

 今回宇都宮ライトレールが開通する駅東側は、陽東地区を中心とした宅地の造成や、鬼怒川東岸の工業団地の建設で、爆発的な発展を遂げている。しかし、このエリアでも高齢化が進みつつあり、かつ東北新幹線で東京方面に通勤・通学するケースも増えてきた。

 宇都宮ライトレールは高齢者の移動手段としてだけでなく「県外への新幹線通学への補助」などの施策で、住民のつなぎ止めを図る目的もある。移動時間の目算を立てて移動できるなら、工業団地からの通勤、新幹線への乗り継ぎもスムーズにできるエリアとして、街の価値を維持できる。宇都宮市を住む場所・働く場所として選択肢に入れてもらえるというわけだ。

 なお、宇都宮ライトレールのダイヤ(時刻表)は、東北新幹線の始発・終着にしっかりと合わせた便が設定されている。

 そして開業を目前に控えた現在、“ライトレール効果”の予兆が現れつつある。不動産情報サイト「LIFULL HOMES PRESS」によると、宇都宮ライトレール沿線の賃貸物件への1カ月の問い合わせが前年比で54%増加(248→382件)した。新築賃貸物件に至っては587.5%(229→1571件)も増えている。

 なお、宇都宮市内の他地区ではいずれも微減にとどまっており、移動が便利な宇都宮ライトレール沿線で家を探す傾向がはっきりあらわれていると言えるだろう。

宇都宮ライトレール LIFULL HOMES PRESS」より

 「鉄道が通れば街の価値が上がる」といえば、福岡市地下鉄七隈線が、たった1キロ少々の延伸開業(天神南駅〜博多駅・2023年3月開業)で、沿線の開発状況や混雑状況がまったく変貌したのも記憶に新しい。

<参考:「低迷続きの福岡「七隈線」が、たった「1.6キロ」の延伸で「超混雑路線」になったワケ」>

 ただし、この法則が発動するのは、宇都宮ライトレールが「使える鉄道」であればの話だ。実際には、まだまだ課題が山積みだ。

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