DXの先進自治体として知られる神戸市。全国で人口減少が進む中、神戸市は限られた職員数で効果的な市政運営を進めようと、早い段階から、財政の健全化と市民サービスの維持向上を両立させる取り組みを進めてきた。中でも、業務の効率化をはじめとする職員の働き方改革には注力している。
例えば、2021年度までに全庁的に導入した、デスクワークをソフトウエア型のロボットで自動化するロボティック・プロセス・オートメーション(RPA)ツールが代表的だ。
各部署では日々、中央省庁から自治体に届く「通知」を職員が確認し、PDFをダウンロードして特定のフォルダに格納する――という定型業務があるという。
とりわけ、厚生労働省や関連機関からの通知が多いというが、この確認作業に要する時間が大きな負担になっていたという。これをRPAが確認し、ダウンロードからフォルダへの格納までを自動化する仕組みを構築。
これにより、厚労省関連の通知の処理だけでも、年間360時間の削減に成功したという。
今回の生成AIの活用も、数ある業務効率化の一環として取り入れた。
神戸市は9月22日までChatGPTの試行利用を実施。その後、年明けをめどに、何らかの形で本格利用にこぎつけたい考えだ。現在は、どのような形で本格利用ができるか、検証を進めている段階だ。
「アイデア出しや、文章が生成できるといった活用事例にとどまらず、もう少し踏み込んだ形で試行結果を公表したい」と元村さんは話す。
確かに、行政特有の業務で、生成AIの効果的な利用法はまだ広く共有されていない。
「例えば保健福祉の業務で、市民向けに『医療費の支払いをお願いします』という督促通知を出した際、未払いを防ぎ支払い率が高まるような効果的な通知文章が作れた――といった、具体的なシチュエーションが生まれれば、本格利用の意味も大きくなる」(元村さん)
このほか、市民と直接対話ができるチャットボットの開発なども目指している。「住民票は何時から窓口で取得できるのか」といった質問に、正確に答えられるようになれば、市民はわざわざ市のWebサイトを調べたり、電話で確認する手間を省ける。電話対応する職員の負担軽減にもつながる。
元村さんは「今の使い方が最適だとは考えていない。技術の進展が速い中で、最適なより良いサービスを探していきたい」と話している。
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