「あれ、なに?」と思わず声が出る“乗り物”の正体 沖縄の街でゆるりゆるり経済の「雑学」(2/3 ページ)

» 2023年09月10日 09時10分 公開
[土肥義則ITmedia]

エリア外を走る人は全体の1%以下

 ところで、なぜ美浜エリアでこのような乗り物が走行しているのか。これは「グリーンスローモビリティ」(通称:グリスロ)の一環として、取り組んでいる事業である。

 「ん? グリスロってなに?」と思われたかもしれないが、グリスロとは時速20キロ未満で公道を走る電気自動車のこと。国土交通省が2018年に提案していて、ゴルフカートなどを改良した乗り物を、高齢者が移動手段などで利用しているケースが多い。

 「そういえば、ウチの実家の近くで見たことがあるなあ」「旅行先で見たよ。10人ほどが乗れるバスタイプもあるよね」といった声も出てきそうだが、その通りである。走行しているエリアを見ると、全国でじわじわ増えているのだ。

北谷町の美浜エリアを走行しているシャトルカート

 ヤマハ発動機は「グリスロ」という言葉が広まる前に、同社のゴルフカートをベースに公道を走れる“乗り物”を開発し、導入を進めてきた。14年に石川県輪島市の商工会議所から要望を受け、ゴルフカートを改良して、軽自動車のナンバーを取得。輪島市内を走行したところ「ウチの町でも」といった声が相次ぎ、これまで50カ所以上で協力している。

 話を美浜エリアに戻す。冒頭でSC-1の話をしたが、ヤマハ発動機は19年からこのエリアで、グリスロの運行に関わっている(運営主体はチャタモビ社)。バスのように乗り場があって、決められたルートをグルグル回るパターンもあれば、エリア内を自由に走行できるパターンもある。「ん? 自由に運転できれば、中には悪ふざけをする人も出てくるのでは?」などと思われたかもしれないが、エリア外を走る人は全体の1%以下だという。

ルートマップ

 なぜ、それほど少ないのか。理由は2つあって、1つは仕組みで解決しているから。エリアを外れそうになると、車内でアナウンスが流れるので、ドライバーは「この交差点をわたってはいけないのね」などと受け止め、決められた範囲内で走行する人が多いようだ。

 もう1つは、エリアの特性があるから。北谷町の美浜エリアを訪れたことがある人は想像できるだろうが、観光客の多くは海のほうに向かう。内陸側は商業施設などが少ないこともあって、客の数は少ない。こうした地理上の特性によって、エリア外に行く人はほとんどいないそうだ。

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