1泊1室66万円! 長崎県の平戸城で、どんな“体験”を提供しているのか「富裕層」を狙え! 観光最前線(5/5 ページ)

» 2023年09月14日 08時00分 公開
[小林香織ITmedia]
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平戸全域をインバウンドの目的地へ

 これから平戸城の城泊事業を拡大していくにあたり、何が課題になるのか。鞍掛氏は「アクセス」と「認知」を挙げた。

 まずアクセスだが、平戸城までは福岡(博多)、または長崎からクルマで約2時間かかる。多くのゲストは、いずれかの地域でレンタカーを借りて訪れる。福岡空港からハイヤーで訪れる人も一部いる。

 いずれにしても移動時間がかかるため、現在、運営側で考えているのは長崎からヘリコプターで移動するプランだ。すると約20分で到着できるうえ、体験価値も高い。「往復のハイヤー利用料金と大きく変わらない15万円ほどで実現できるだろう」と鞍掛氏は話した。

 さらなる認知拡大も求められる。日本における「城泊」は、20年7月にスタートした愛媛県の「大洲城キャッスルステイ」が初だった。天守、重要文化財のふたつの櫓(やぐら)を含む大洲城を貸し切りにできて、料金は1人1泊55万円(朝夕食付き)となる。

大洲城では、日本初となる木造天守閣に宿泊できる城主体験ができる(バリューマネジメント社のプレスリリースより)

 欧州では歴史的資源である城を宿泊施設として活用し、富裕層が貸し切りで利用することがよくあるという。そんな城泊が日本でも始まったとして富裕層を中心に注目されているようだが、始まったばかりの平戸城の城泊は、まだ認知が十分でないそうだ。

 国内では、国の支援対象に選ばれたいくつかの城が城泊の開業を検討している。それらがオープンすれば、海外富裕層の“城泊熱”がより高まるかもしれない。平戸市では、市内観光の体験価値を高めるため市全体を観光名所化する取り組みも始めている。

平戸市は地域全体の観光体験のアップデートに取り組んでいる

 「現在、事業計画を練っているのですが、イタリア発祥の『アルベルゴ・ディフーゾ(分散型ホテル)』を取り入れます。これは地域に点在する空き家を活用し、建物単体ではなく地域一帯を点在型ホテルとする取り組みです。平戸市には豪華な古民家などが多くあり、それらをリノベーションしてホテルとして活用する予定です。

 同時に古いレストランもリノベーションを行い、地域の食材や料理を味わうガストロノミーツーリズムを楽しめるようにします。その他、世界遺産の山のトレッキングや周囲の島を散策するアドベンチャーツーリズムにも注力し、パッケージツアーなどを開発します」

 訪れた人々が、より地域に溶け込むような旅行体験ができるよう地域全体をアップデートさせている平戸市。城泊を皮切りに進化し始めた平戸市のこれからが気になるところだ。

写真提供:狼煙社

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