労働時間の判断は「会社の指揮命令下に置かれているかどうか」がポイントだとお伝えした。では、次の時間は果たして労働時間として賃金支払いの対象となるだろうか。お考えいただきたい。
察しのよい方ならお気付きかもしれないが、これらはいずれも「賃金支払いの対象となる労働時間」として扱われる。もし初耳であれば、ぜひこの機会に再認識いただければ幸いだ。
中でも、例えば「来客待ち」や「仮眠」「出張先への移動」といった時間は身体が休まっている以上、休憩時間かのような印象を持つ方も少なくないだろう。そして実際に、休憩時間として無賃金扱いとしたり「休憩時間なんだから、ちょっとした電話番や来客対応くらいは任せてよいだろう」などと思ってしまいがちだ。
しかし、これらは「手待ち時間」と呼ばれ、実作業はしていないとしても「会社から指示があった場合、すぐに作業に取り掛かれるような状態で待機している時間」として扱われる。当然これは「会社の指揮命令下にある」わけだから、労働時間なのだ。
出張先移動も、単に自由に時間を使える移動だけであれば労働時間にはならないが、移動中に作業をこなす指示が出ていたり、金銭や物品の監視義務を担っていたりする場合は、当然ながら労働時間扱いとなる。
また、先ほど「黙示の命令」という言葉が出たが、これは労働時間のみならず、残業時間に該当するか否かを判断する際にもよく用いられる概念だ。例えば、従業員の過重労働が発覚した組織において、その労働が決して「業務命令ではない」との扱いにしたいがために、使用者側がしばしばこのような言い訳をしているのをご覧になったことはないだろうか。
いくら使用者側が「残業禁止」や「主体的な行動」などと主張して責任を逃れようとしても、客観的にみて時間内で終らない量の仕事を与えていたり、目の前で行われている残業を管理職が黙認していたり、部活指導や自己研鑽をしないことで組織から不利益な扱いを受けたりするのであれば、それは「黙示の残業命令」である。当然残業代支払の対象となるし、労務管理がずさんであることに変わりはないのだ。
イケア・ジャパンのニュースは、いわばこれまでの違法状態が判明したという本来は不名誉な報道であったにもかかわらず、世論は「ちゃんと法律を守って、働く人の意欲を向上させようとしている!」と、ポジティブに受けとめられていたことは大変印象的であった。
手待ち時間や労働時間の定義を正しく理解し、遵法に企業運営を心掛けていけば、真っ当に評価される時代であると前向きに捉えるべきであろう。
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