ジャニーズ事務所は、日本のエンターテインメント業界でその名を不動のものとしてきた。同社は数多くのトップアイドルを生み出し、その存在感はテレビや音楽界だけでなく、広告業界にも大きな影響を与えてきた。しかしジャニー喜多川氏の死後に性加害が国際問題化したことで、これまでメディアも表沙汰にすることのなかった目も疑う不祥事が公になっている。
ジャニーズ事務所に所属するタレントはテレビ番組や映像作品の出演のみならず、日本を代表する大企業のテレビCMにも数多く起用されている。その中でも、特にテレビCMにおける大企業の「ジャニーズ離れ」が大勢になってきた。本稿を執筆した14日午後時点で、アサヒグループHDやキリンHD、サッポロHDのような大手飲料メーカーにとどまらず、東京海上日動火災保険、日本航空なども相次いでタレント起用の見送りを公表している。当初はタレント起用を継続し、テレビCMも放映していた花王やモスバーガーも、一転してテレビCMを取りやめている。
ジャニーズ事務所は9月13日に、裁判所OBの弁護士3人を中心に構成された被害者救済委員会の設置を表明すると同時に、今後1年間は所属タレントの出演料を本人に全て支払うことで信頼回復に努める方針を発表したが、それでも「ジャニーズ離れ」の動きに歯止めがかからない。
相次ぐCMスポンサーの起用見送りによって、スポンサー企業側の対応については大勢が決まってきたといえるだろう。しかし、主にジャニーズ事務所のファンや所属タレントと交友関係のある芸能人の間では、相次ぐ「ジャニーズ離れ」に対する批判の声も大きい。
その背景としては、フジテレビが9月4日の番組改編に関する説明会の場で制作局長が述べた「タレントに問題があったわけではない」ため、キャスティングを継続すると公表したことも大きいだろう。単純にこの言葉を反対解釈してしまうと、罪のない所属タレントの起用を見送ることは不合理な仕打ちであるということになりかねない。
しかし、企業の危機管理やコンプライアンスの観点から所属タレントの広告起用を見送ることは、ビジネスの世界では当然の意思決定であるといえる。
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