同商品は1足1650円と、靴下屋の商品の中では、やや価格設定が高い。というのも、履き心地の良さや刺しゅうの再現度などクオリティーにこだわったためだ。
当初、タビオ社の社内で「このサイズの刺しゅうは無理じゃないか」と言われていたが、第1弾を製作するタイミングで最新機器への入れ替えがあり、この精度が実現したという。
同商品のメインターゲットは30代女性で、実際にその層によく売れている。だが、その前後の世代の女性や男性からも購入されている。なぜ、幅広く支持を得たのか。吉田氏は「ファッション要素」と「ストーリー性」が要因だと分析している。
第1弾で発売した「ゆかり」「ひろし」「あかり」の3種類は、発売時期が春であることを考慮して、最終的に配色のバランスで選んだという。
第2弾は秋口の発売だったこと、「かおりを発売してほしい」という要望が多く寄せられたことなどを踏まえ、「ゆかり」「ひろし」「うめこ」「かおり」「かつお」の5種類とした。第2弾の発売時、ファッション系メディアに記事が掲載され、同メディアのSNS投稿は「いいね」が4万を超えた。これは「意外だった」と吉田氏。
「三島食品さんのコラボ企画は、メディアでよく取り上げられていて、『おもしろネタ』としてウケが良かったと思います。ところが、今回はファッションメディアの記事が最も反響が良かった。季節に合ったカラーや刺しゅうのさりげなさが、女性に刺さったのかもしれません」(吉田氏)
ファッションとしてのかわいさに加え、もう一つ購買意欲を掻(か)き立てたのが、「人の名前」にちなんだ商品名であること。SNSでは「ゆかり」さんが「ゆかり」を、「かおり」さんが「かおり」を買ったという投稿が多く見られた。たまたま筆者の名前が「かおり」であり、購入したくなる気持ちは大いに理解できる。
三島食品の直販事業 竹原智史氏によれば、意外な目的で購入した人もいたようだ。
「SNSの反応を見ていると、『ひろし』の靴下をお父様などへのプレゼントとして、あるいは推しの名前が『ひろし』でコンサートで履く推し活グッズとして購入された方もいたようです。後者の需要は予想外でしたね」(竹原氏)
一番人気はダントツで「ゆかり」。次いで「ひろし」「かおり」と続く。自身のアイデンティティーを表すアイテムとして、誰かを喜ばせるためのプレゼントとして購入する人が多かったのだろう。ストーリーをつくって広めやすかったことも、売れた要素ではないかと吉田氏は話した。
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