自治体が抱える課題をグランピングで解決する――そんな取り組みが広がっている。古くから城下町として栄え、現在も昔ながらの街並みや屋敷が残る岡山県津山市。同市が2005年に編入した、人口400人ほどの「阿波(あば)地区」で、21年5月にグランピング施設「ザランタンあば村」がオープンした。仕掛け人は、ITを軸にレガシーな観光業界の変革に挑んでいるダイブ(東京都新宿区)だ。
津山市役所の川口義洋氏(津山市 総務部 財産活用課 課長)は、阿波地区について「400人くらいの村で、高齢化も進んでいることから限界集落に近い状態でした」と振り返る。いったいなぜ、ダイブはそうした地域にグランピング施設をオープンしたのか。
ダイブの地方創生事業は、日本各地が観光地として非常に高いポテンシャルを有しながら、生かし切れていなかったことを背景に立ち上がった。例えば、日本国内には観光地として無名ながらも、温泉や自然豊かな環境がたくさんある。そうした「非観光地」を観光地化できないかと考えた。
観光事業に乗り出すに当たって注目した課題が宿泊施設の「在庫」だ。宿泊施設は部屋が100個あれば、通年で100個を運営する必要がある。ただ、観光には繁閑期があるため、閑散期は売り上げが下がってしまう。また繁忙期には部屋が埋まると、それ以上の売り上げを望めない。そこで、時期に応じて部屋数を変動させられるテントを用いたグランピング事業を思い至った。
グランピング事業を展開するに当たって「価格」に工夫を凝らした。ダイブの増田勇人氏(CMO 兼 地方創生事業グループ ゼネラルマネージャー)は次のように振り返る。
「グランピングに関してリサーチしたところ、興味を持っている人は多いものの、実際にやったことがある人は非常に少数派であることが分かりました。さらに調べると、1万円ほどで泊まりたい人が多いにも関わらず、ほとんどの施設はかなり高価な設定になっています。そこで、安価なグランピング施設に勝機があると考えました」
とはいえ、従来のグランピング施設が高価なことには理由がある。例えば、グランピングはテントで行う「離れ」形式がメインだ。まとまって部屋を作れるホテルと違い、敷地に対して稼働できる部屋が少ない。「ホテルなら5億円で100室作れるとして、グランピング施設では15部屋くらいしか作れません」(増田氏)。そのため、1室当たりの価格が高くなってしまう。
そこで目を付けたのが、自治体が抱える遊休施設や遊休地だ。
全国の自治体には、高度経済成長期からバブル期にかけて作られた施設が数多く存在する。人口減によって使われなくなりながらも、財政を圧迫しながら維持・管理し続ける自治体は少なくない。そうした資産を活用すれば、安価に施設を立ち上げられると考えた。
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