生成AIは、働き方を含めて社会を一変させる可能性がある。化粧品業界には、どういった影響があるのか聞いた。
「ロレアルはビューティーテックの先端企業でありたいと思っています。ChatGPTの前からAIを使ってきましたが、当社のCEOは『すべての人のための美』から『一人ひとりのための美』にシフトしていきたいと発言しています。それを可能にするものだと考えています。
具体的には、アプリで肌診断をすることが可能となりました。肌の写真を撮影してAIが診断をし、その人にあったオススメを提示します。ファンデーションで見れば3万5000もの色を用意していて、そこから最適なカラーを選んでくれます。その精度ですが、照明の明るさという不安定要因があっても99%に達します。今後もAIを活用した開発は進むでしょう。仕事の効率化も図れるでしょうし、お客さまとのFace-to-Faceという直接のやりとりでも活用が進むでしょう」
客と直接話すデパートなどの美容部員の役割に変化はあるのか聞くと「AIがあっても、美容部員は必要です。彼らは特別なスキルを持っていますからAIに置き換えることはできないですし、美容部員からアドバイスをもらいたい人は必ずいるからです」と話す。
「AIはあくまでディープラーニングによるコピーであって新しいものを作り出せないと解釈していいのか?」と尋ねると「その通りです」と付け加えた。
「AIなどの技術で提供されるバーチャルなスタイリストは、これまでお店に行けず美容部員にアクセスできなかった人にリーチできます。私はマスマーケットのエリアで仕事をしてきた人間ですが、美容部員らが持っていた専門知識を、AIを通じてマスの世界に導入できるようになることはまさに“革命”だと思っています」
これまではデパートがないような地域では、美容部員によるアドバイスすらもらえなかった。だがデジタルデバイスを使えば、それを補えるようになるため、新たな市場開拓につながる。
ロレアルは消費者がサステナブルな選択をできるようにするため、製品の環境と社会的影響をラベルで表示する「Product Environmental & Social Impact Labelling(製品の環境・社会的影響表示ラベル)」を開発した。
「例えばですが、シャンプーを流すときに少ない水の量で流せる商品を開発したり、化粧品のパッケージはリサイクル可能なものを使用したりするなど企業としてサステナブルな活動をしなければなりません。世界の70の化粧品会社と専門団体が協力して『エコビューティースコア・コンソーシアム』を設立しました。環境評価を数値化し、最後は消費者が購入する際の判断材料を提供してきたいと考えています」
ペラキス氏が語っていた「イノベーションを止めない」という信念や、「グローバル企業でありながらローカルに強い企業でありたい」という戦略はスカイハイで具現化され、日本での年間販売個数1位という結果をもたらした。
どの業界にもいえることだが、究極の商品とは「マスプロダクトの反対=その人だけにあったオーダーメイドの商品」だろう。「みんなのための美」から「個人のための美」にシフトしているロレアルは、その意味で、究極の小売ビジネスに近づこうと努力し、そのためにAIをフル活用している。
翻って日本企業が海外でビジネスをする場合、AIの活用と適切な現地化ができるかがポイントとなる。その意味で、ロレアルのやり方は良い参考事例になるだろう。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
Special
PR注目記事ランキング