ジャニーズ性加害問題 注目される「広告主」の今後の対応(3/3 ページ)

» 2023年09月27日 09時10分 公開
[徳力基彦ITmedia]
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広告主だからこそできること

 ただ、「ジャニーズ性加害問題当事者の会」が提言しているように、広告主は実はこの問題に対して能動的に行動することを選択することも可能です。

 本来、広告主はタレントにテレビCMなどに出演してもらうことにより、自社の製品やサービスをより多くの人に知ってもらったり好きになってもらうために、スポンサーをしている立場です。

 今回、再発防止特別チームが明確に問題の原因として指摘した大手メディアのように、ジャニーズ所属タレントに出演してもらわなければ既存のテレビ番組が立ちゆかなくなってしまうというレベルの、深いもたれ合いの関係にあるわけではありません。

 当然、今出演中のタレントを切り替えれば既存ファンにそっぽを向かれるリスクはありますが、同じレベルのファンの多いタレントを起用することで、ある程度のカバーは可能です。

 だからこそ、広告主はジャニーズ事務所に対して、所属タレントや被害者に対する対応や補償を強く要求することが可能なはずなのです。

 今回の問題に対して、タレントをいかに守るかという視点で、ファンを巻き込んだ活動を考えることも可能でしょう。

 それだけではなく、今回のような芸能事務所の経営者による所属タレントに対する犯罪行為や、犯罪行為の隠蔽や放置が二度と起きないように、スポンサー契約を行う芸能事務所に対する倫理基準や契約内容を厳しく見直すことで、日本の芸能界におけるタレントの地位を守る立場として行動することもできるはずです。

最悪の時期もタイガー・ウッズを支え続けたナイキ

 個人的に非常に印象に残っているのが、ナイキが、タイガー・ウッズを不倫問題や薬物影響下の逮捕など、最悪の騒動を起こしたときも支え続け、奇跡の復活を後押ししていたという話です。

photo タイガー・ウッズ(出典:PGAツアー公式Webサイト)

(参考記事:奇跡の復活、タイガー・ウッズを支えたナイキの「信じる力」

 もちろん、アスリートとタレントは違いますし、契約や問題の構造も全く違いますが、自らのブランドに貢献してくれた「恩人」に対する対応として、一つの理想と言えるはずです。

 現在もジャニーズ所属タレントは、一人で複数社契約しているケースも少なくありませんし、事務所全体では契約社数は100社を超えるとも言われていますので、その影響力は非常に大きいといえます。

 当然、広告主にとっては現在の状況で声をあげること自体がリスクと感じている企業の方が多いと思われますが、問題の大きさや、これまで広告主がジャニーズ事務所に投資し続けてきた金額を考えると、実はこの問題に対して沈黙を続けることもリスクになり得る状況であると考えた方がよいはずです。

 今回の騒動を通じて、ファンや視聴者は間違いなく、広告主が自社の契約タレントをどのように扱うのか、今回の問題に対してどのように対応するのかを見ています。

 ネットにおいては嫌われ者として扱われがちな「広告」ですが、今回のような問題においてどのように広告主が行動するかが、今後の日本における「広告」の印象にも影響を与えるはずです。

 広告主の方々が、被害者はもちろん、タレントやファンの方々にとって、今取るべき行動を選択されることに注目したいと思います。

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