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「給与のために残業したい」部下からの申し出、断れる?Q&A 社労士に聞く、現場のギモン(2/2 ページ)

» 2023年09月28日 07時00分 公開
[近藤留美ITmedia]
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では、どうしたらいい?

 具体的な方法としては、残業に対する命令、許可制を明確にし、周知と徹底をすることです。そして何より大切なことは、実態としても、それが適正に運用されるようにすることです。

 仮に残業に対する命令、許可制が明確化、ルール化されても、本件相談のように、実態としては、残業が黙認されてしまい適正に運用されていなければ意味がありません。

 また、使用者には労働時間を適正に把握・管理しなければならない義務がありますが、個々の社員の労働時間を適正に把握、管理することで、残業に対する命令、許可制も適正に運用されることにつながるのではないでしょうか。

給与体系の見直しも

 一方で、この相談で問題となっている社員が「給与のため、最低でも月20時間は残業したい」と口にしているのが気にかかります。具体的に「月20時間は残業代が欲しい」と言っています。つまり給与がそれだけ足りないということです。

 足りない理由はご質問からは分かりません。社員側に問題があって、単に浪費家なのかもしれませんし、借金があって毎月それだけの支払いがあるのかもしれません。しかし、会社の支給する給与額そのものが社会相場に比べてかなり低い場合は、会社側にも問題があると言えないでしょうか。

 もし、残業しなければ生活できないくらい、給与が低いというのであれば、会社が給与額や賃金制度を見直す必要があるでしょう。

 社員が安心して働くためには、少なくとも、残業せずとも生活できる程度の給与は支給する必要があります。安定した生活ができなければ、社員はその能力やパフォーマンスを十分に発揮できないでしょうし、場合によっては離職にもつながります。

 社員一人一人の労働時間を把握、管理するとともに、一度、一人一人の賃金、業務量などについても適正であるかどうか確認をおすすめいたします。

著者:近藤留美 近藤事務所 特定社会保険労務士

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大学卒業後、小売業の会社で販売、接客業に携わる。転職後、結婚を機に退職し、長い間「働く」ことから離れていたが、下の子供の幼稚園入園を機に社会保険労務士の資格を取得し社会復帰を目指す。

平成23年から4年間、千葉と神奈川で労働局雇用均等室(現在の雇用環境均等部)の指導員として勤務し、主にセクハラ、マタハラなどの相談対応業務に従事する。平成27年、社会保険労務士事務所を開業。

現在は、顧問先の労務管理について助言や指導、就業規則等規程の整備、各種関係手続を行っている。

顧問先には、女性の社長や人事労務担当者が多いのも特徴で、育児や家庭、プライベートとの両立を図りながらキャリアアップを目指す同志のような気持ちで、ご相談に乗るよう心がけている。


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