働き方に対する現場の疑問を、社労士がQ&A形式で回答します。
Q: 私が部長を務める部署で、残業削減を目指しています。部下に「なるべく早く業務を終えて帰るように。終わらないのであれば業務を他メンバーにも割り振るので、相談するように」と伝えたところ、「給与のため、最低でも月20時間は残業したい」と申し出がありました。部署の残業削減の目標は伝えているものの、頑固として残業を減らそうとしてくれません。
この部下の意思は尊重すべきなのでしょうか。彼だけに残業を許可してその分残業代が得られるようにするのは不公平な気もします。
A: 「残業代が欲しいから」といった理由で、残業を認める必要はありません。逆に、ご相談にあるような「給与のための残業」は、させてはいけないと考えます。
本来、残業とは、その者の所定労働時間内あるいは法定労働時間内に業務が終わらないけれども業務上の必要性があるから行うものです。実施の際は、使用者の命令または本人の申し出に対する会社の許可に基づき行わせるものと考えられています。
この社員は、たとえ労働時間内に業務を終わらせられなくとも、上司に相談することで他のメンバーに割り振ることも可能とのことですから、その多くの残業については、残業する業務上の必要性はないと考えられます。
なお、この社員には口頭で「残業しないよう、業務が終わらず残業になりそうな場合は相談するよう」伝えているのに聞いてもらえず、結果として残業をしている状況になっているとのことでした。この場合でも、会社は「残業を黙認している」と判断されます。そのため、当然に残業代は発生します。
本来必要のない残業に対して、割り増しな残業代を支払うことは会社にとって負担ですし、残業を黙認することで長時間勤務となった場合に、当該労働者の健康を害するようなことになれば、使用者の安全配慮義務違反を問われる可能性も出てきます。
さらに相談でもあるように、日中に効率よく仕事をこなし成果を上げている他の社員は、残業代がつかず不公平に感じているかもしれません。その結果、個人のやる気や会社全体の士気も下がりかねません。
これらの状況を考えると、いわゆるダラダラ残業も含め「給与のための残業」を黙認していて、会社にメリットは少しもありませんから、直ちに止めさせる策を会社は講ずるべきでしょう。
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