問題のある組織というのは、往々にして経営陣に問題がある。そこが変わらないと組織は何も変わらない。経営陣が去ったように見えても、その後を引き継ぐのが、前経営陣の側近や、前経営陣の後ろ盾があって組織内で発言権があったような人たちだと結局、何も変わらない。
その組織を腐らせていた「権力者の不正に目をつぶる」「不正のうわさを聞いても、組織全体で思考停止する」などのカルチャーが新会社にも受け継がれていくからだ。
新しいエージェント会社の社長は東山紀之さん、副社長を井ノ原快彦さんがそれぞれ務めるという。正直これは期待できない。
ご存じのように、お2人ともジャニー喜多川氏に才能を見出されて、ジャニー氏の教育を受けて、ジャニー氏の芸能界における影響力もあって、今の地位を築いた人たちだ。
「ジャニー喜多川の痕跡をこの世から一切なくしたい」というのであれば、そのような「旧ジャニーズ事務所のカルチャーを引き継ぐ人」に組織の舵(かじ)取りなどやらせるべきではない。
お2人とも多くのファンに夢や希望を与えてきたエンターテイナーなので、そのまま個人での芸能活動を続けて、新しいエージェント会社は、これまでジャニー氏ともジュリー氏とも全く接点のない外部人材に任せるべきだろう。
そもそも、このような組織を生まれ変わらせるだけの「資質」もない。会見によれば、9月30日までに性加害を受けたと申し出があったのは478人いて、そのうち被害を申告して、補償を求めているのは325人もいた。
これだけすさまじい性犯罪が行われているにもかかわらず、東山さんも井ノ原さんも「うわさレベルでしか知らなかった」と言い切っていた。報道によると、お2人とも事務所内ではタレント業だけでなく、「後進の育成」にも力を入れていた。そんな人たちが、これほど膨大な数の未成年者が性被害にあっていたにもかかわらず、被害者から告発や相談を受けていない。よほど「人望」がないのか、「あの人はジャニーさん側の人間だから無駄だろう」とあきらめられていた、と考えるのが自然だ。
また「被害者の会」の中には、東山社長が性加害を知らなかったのは「現実的ではない」「まだうそをつくのか」と憤っているメンバーもいる。
厳しい言い方だが、ジャニーズの悪しき隠ぺい・忖度(そんたく)のカルチャーと決別して、新しい組織をつくっていく「資質」があるとは思えない。
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