「SMILE-UP.」社名を変えても“再生”は難しい なぜ日本企業は素人を「社長」にさせるのかスピン経済の歩き方(4/5 ページ)

» 2023年10月03日 10時31分 公開
[窪田順生ITmedia]

異常なビジネス習慣のある国

 しかも、「就任したCEOの他企業での経験」を見ると、その異常さが際立つ。

 「他企業での経験なし」は欧米、カナダは6%、西欧でも14%、ブラジル、ロシア、インド、アルゼンチン、オーストラリア、バーレン、チリ、香港、ハンガリー、ニュージーランド、ポーランド、韓国、中国などが3割程度なのに対して、なんと日本だけが82%と突出して高い。

「他企業での経験なし」日本が突出して高い(出典:経済産業省)

 エジプト、カザフスタン、メキシコ、ナイジェリア、南アフリカ、トルコ、ベトナムなど新興国でも3割程度ということを考えると、日本企業の経営者が、「自分の会社でしか働いたことがない」というかなり独特なキャリアを歩んでいることが分かる。

 会社にはそれぞれ独自のカルチャーがある。特に同族経営の企業などは「宗教ですか?」とあきれてしまうような異常なルールがある場合も少なくない。そういう意味では外部と隔絶された「特殊な世界」だ。

 日本の社長は8割以上がこの特殊な世界しか知らない。他企業で経験を積んだり、グローバルでビジネスを展開したりしていない。そんな「経営の素人」なのに、特殊な世界の中でうまく立ち回って内部昇格をしてきただけで社長になる――という世界的に見るとかなり「異常な経営者」が多いのだ。

 「そ……それの何が悪い! そういう家族のような会社経営が、世界一の技術をつくってきたわけだろ。世界がおかしくて日本のやり方が正しいということもある!」と不愉快になる人も多いだろうが、そういう体育会運動部のようなノリは、経済がいいときはうまく回っていた。

 しかし、人口減少で内需も縮んで「逆回転」すると、そういう家族的なウェットな人間関係の悪いところが出始める。その代表が「今は厳しいのでボーナスを勘弁してくれ」のような、人情を逆手にとった“お願い”だ。これは、低賃金労働の温床となっている。

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