「SMILE-UP.」社名を変えても“再生”は難しい なぜ日本企業は素人を「社長」にさせるのかスピン経済の歩き方(3/5 ページ)

» 2023年10月03日 10時31分 公開
[窪田順生ITmedia]

“モンスター”をつくってしまった側面

 では、経営者としての経験もない、資質もない東山さんや井ノ原さんに、なぜこの厳しい局面で、不祥事企業の立て直しをやらせなくていけないのか。「経営のプロ」や「企業再生請負人」と呼ばれるような人をトップに招いて、ゼロから新しい会社をつくるべきだが、なぜそれをやらないのか。

 よく言うのは、ワイドショーのコメンテーターなどが主張している「アイドルのマネジメントは特殊な世界なので、現場を知っている東山さんや井ノ原さんが経営をやったほうがいい」ということだ。

 だが、筆者に言わせると、そういう考え方がジャニー喜多川氏のような“モンスター”をつくってしまった側面がある。

 未成年者をアイドルに育てるのは「特殊な世界」なので、それを実体験した者にしかマネジメントが務まらないというのは一見すると理にかなっている。しかし「特殊な世界のことは、あの人にすべて任せよう」という感じで、「特殊な世界」をさらに閉鎖的にしてしまう。つまり、外部から第三者のチェックが働かない「権力者がやりたい放題できる異常な世界」にしてしまうのだ。

 これはジャニーズ事務所に限った話ではない。「特殊な世界を知っているという理由だけで、経営の素人に社長をさせる」のは、日本企業特有のカルチャーだ。

 そして、筆者はこの「素人社長」こそが、日本企業で不正や改ざんなどの不祥事が多発している原因ではないか、と思っている。

 よく言われることだが、日本は異常なほど「プロパー社長」が多い。経済産業省の「経営者の生え抜き率」(出典:第1回未来会議)という資料にはこうある。

 『国際比較すると、日本の経営者の内部昇格割合は97%と、突出して高い。 社外経験のある経営者も少なく、同質性の高さがうかがえる』

経営者の生え抜き率(出典:経済産業省)

 就任したCEOの内部昇格・外部招へいの割合を見ると、欧米、カナダ、ブラジル、ロシア、インド、アルゼンチン、オーストラリア、バーレン、チリ、香港、ハンガリー、ニュージーランド、ポーランド、韓国などで「内部昇格」は7〜8割で、「外部招へい」は2割ほどだ。

 しかし、日本での内部昇格は97%で、外部招へいは3%しかいない。これはエジプト、カザフスタン、メキシコ、ナイジェリア、南アフリカ、トルコ、ベトナムなど新興国と同じ傾向だ。

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