コーヒーチェーン最大手の米スターバックスが9月、米国の空港内にモバイルオーダーに対応したピックアップオンリーストアを開店しました。アプリを介しての注文を中心に対応することで、空港内のレジ待ち行列を大幅に軽減するのが目的です。
「スターバックス・ピックアップ・オンリー」(Starbucks Pickup Only)がオープンしたのは、テキサス州ヒューストンにあるジョージ・ブッシュ・インターコンチネンタル空港内ターミナルE。ほかにも2店舗、年末までにピックアップ・オンリーストアを開店するとのことです。
モバイル・オーダーはレジ待ち行列を緩和し、注文の聞き取りミスや勘違いによるヒューマンエラーを回避できることでクレームが減少、顧客ロイヤリティが高まります。スタッフもより調理に集中できることで、店内オペレーションの合理化を図ることができます。
スターバックスといえば、自宅とも職場とも異なる、第3のリラックスできる場所「サードプレイス」としての機能をアピールし、ブランドを確立してきました。こうしたブランドイメージとは相反するピックアップ・オンリー店舗を広げる狙いは何なのでしょうか。
流通コンサルタント。
35年近い在米生活に基づき、米国の流通業に視察に訪れる経営者や企業を支援している。
公式Webサイト「激しくウォルマートなアメリカ小売業ブログ」では日々、米国小売業の最新情報を発信している。
モバイルオーダーでの注文のみに対応するスターバックス・ピックアップ1号店は2019年11月、ニューヨーク・マンハッタンのペンシルベニア・ステーション上のペンシルベニア・プラザにオープンしました。
現在までにニューヨークやカリフォルニアにそれぞれ11カ所出店しており、これらの州を含めて19州56カ所に展開しています。多くが都心部のビジネス地区に集中しており、オハイオ州立大学のキャンパス内に出店している事例もあります。空港内でピックアップは初出店です。
スターバックスの「サードプレイス」(第三の場所)といえば、同社が成長した経緯を語る上で重要なキーワードであり、スターバックスの強さでもありました。
サードプレイスとは、米社会学者レイ・オルデンバーグが提唱した言葉で、家庭(ファーストプレイス)や職場(セカンドプレイス)でもなく、人々が気軽に集える場所のことを指します。サードプレイスの非日常的な空間は、1人で過ごすのにも友人とのおしゃべりにもくつろぎや楽しさを与えてくれるものです。
スターバックスは、サードプレイスとしての機能に多くの支持を集めてブランドを確立してきました。スターバックスはサードプレイスをアイデンティティとしていたのです。
しかしスターバックスは最近、強みでもあったサードプレイスとしての役割をすでに終えていることを、決算から浮き彫りにしています。実はモバイルオーダーを介した注文に、ドライブスルー、デリバリーが売り上げ全体の74%を占めています。
米国内にある直営店9300店の7割にはドライブスルーがあり、サードプレイスとして機能する店よりも、ドライブスルーのほうが利益率は高いとしているのです。
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