営業活動にAIが導入され、これまで人力で行っていた記録や報告、判断の負担がなくなった場合、どれだけの経済的価値が生まれるのでしょうか。営業担当が1000人いる組織のケースシナリオを考えてみます。1日の労働時間は10時間(調査から平均残業時間を2時間)と設定しています。
まずはコスト削減効果ですが、データの記録や定型的なタスクに営業が使っている2時間が削減され、残業の必要がなくなれば、1日に2000時間の業務効率化となり、営業担当の時給(5000円とする)をかけると 1000万円、年間(250日とする)では 25億円のコスト削減効果が出ると推定されます。
同時に、売り上げ向上効果(※)も見込めます。これまで1日当たり6時間しか担保できなかった活動時間を 1時間増やせたら、6→7時間への活動量増加によって売り上げの15%向上も期待できるでしょう。
つまり、現実的なインパクトはコスト削減効果、売り上げ増収効果が同時に見込まれるため、最終的に生み出される経済的効果は総額で年間約70億円にも達します。
AIが営業業務の一部を自動化することが当たり前になる時代に備えて、AIが活用でき、信頼できるデータを持っていることは自社の競争優位につながります。
本連載では企業がAI活用の波に取り残されないよう、海外の先進事例を見ながら日本企業が始めるべき「正しいデータ基盤構築の必要性」についてお話しました。組織横断の取り組みであり、かつデータが一定量貯まるまでは時間がかかりますが、組織的な取り組みとして推進する意思決定ができるかどうかが、10年後の競争力を左右することになると思います。
本連載が、営業業務にAIを活用しようと奮闘されている読者のヒントになれば幸いです。
中央大学法学部卒業後、2社を経てGoogle Japan、freeeで営業部門の統括及び責任者として事業成長を牽引。2017年にMagic Momentを立ち上げ、2018年9月より経営を本格化。累計資金調達額20億円(DCMベンチャーズ、DNX Ventures、三井物産、ほか)。LINEやUSEN、凸版印刷等、多くのエンタープライズ企業の営業変革を人・テクノロジー・オペレーションの全方向から支援。2021年にローンチした営業AI行動システム Magic Moment Playbook は、SMBの大量解約の時期を乗り越え、現在はエンタープライズ企業の生産性向上、LTV向上を非連続に実現している。
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