新時代セールスの教科書

外資の営業は10年前からAI活用 なぜ日本企業の多くはいまだに「蚊帳の外」なのか元・外資営業役員が語る(1/4 ページ)

» 2023年09月28日 08時00分 公開

 連載1〜3回でAIを営業組織に組み込むハードルと導入までのアウトラインを解説してきたが、実際AI×セールステック先進国である米国やドイツではどこまで進んでいるのか。また、どのような効果が出ているのか、日本企業はなにを参考にすべきなのか。

 元SAPジャパンのバイスプレジデントで、現在富士通SVP Japanリージョン オファリングセールス本部長の小松新太郎氏とグーグルジャパンで営業統括部長、freeeで営業統括役員を歴任したMagic Moment代表 村尾祐弥氏が解説します。

外資の営業組織の多くは即AI活用できる、なぜ日本はできないのか?

村尾: 小松さんはOracleをはじめSAPジャパンのバイスプレジデント、キリバ・ジャパンの社長を経て現在富士通にいらっしゃいますが、キャリアの大半を外資営業のマネジメントに携わってきましたよね。わたしもグーグルジャパンで営業統括部長をしていたこともあり、今でも当時のメンバーと話す機会が多いのですが、少なくとも10年ほど前にはAIによる簡単な業務自動化は存在していたように思います。実際現在の外資企業はどこまでAI活用が進んでいるのでしょう。

小松: もちろん一概には言えませんが、皆さんが知っているような外資系企業ではすでに活用事例が出てきています。実際、雑務的なものは全て標準化してAIで自動化していたり、AIが次のアクションをレコメンドしたりすることで、経験の少ない新人営業からのアプローチも反応率が担保されるなど、実用化が一般的になりつつある領域もあると思います。

 これらの企業に共通するのは、同じ物差しで物事を判断するために組織内に単一の「全世界共通の基盤」があることです。CRMなどの活用によって、AIに学習させるためのデータがすでに準備できている状態です。

 一方、日本ではCRMを導入していても、ほとんど活用されていないケースが多いですよね。契約取得後の手続きのためのオーダリングツール止まりで、営業活動の川上から川下までのデータを蓄積して活用するといったことはできていない印象です。 AI活用は案件発生からクローズ、またそれ以降の経緯が正しくデータとして取得できていることが大前提です。それがあって初めて、AIがデータをもとに思考したりレコメンドを出したりできるわけです。

富士通株式会社 SVP Japanリージョン オファリングセールス本部長 小松 新太郎氏。大学卒業後、IT企業で営業としてのキャリアをスタート。その後30年にわたり、大手企業向けの基幹系システム、業績管理システム、ビジネスインテリジェンスやビジネスアナリシス、DWH(データウェアハウス)の営業に従事。営業のマネジメントは25年以上。2003年に Hyperion Solution に入社し、営業責任者として業績向上を実現。07年米国本社の Oracle Corporate による買収を経て日本オラクルに入社、Hyperion事業とOracle BI事業を牽引。10年にSAPジャパンのバイスプレジデントとして入社、Business Objects 事業の営業統括をはじめ、プロセス産業、製造機械産業、新規開拓部門の責任者を歴任し、同社の業績向上に貢献。18年にクラウド型財務管理ソリューションを提供するキリバ・ジャパンの社長に就任。21年9月から現職
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